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事例:D-65

リヤフェンダ―の脱落によるストップランプ配線の断線について

【整備車両】 
 マグナ フィフティ (AC13) MG50X MAGNA 50  推定年式 ―  参考走行距離:約30,000km
【不具合の状態】 
 ストップランプ,およびナンバー灯兼尾灯が点灯しない状態でした.
【点検結果】 
 この車両はチェーンが伸び切っていたり,リヤドリブンスプロケットが極度に摩耗していたり ※1 していたため,お客様のご依頼により,各部の整備をメガスピードにて承ったものです.今回は点灯しないストップランプについて記載します.お預かり時にはリヤフェンダ―の左側の取り付けボルトが紛失していて,フェンダーが脱落してリヤタイヤに接触している状態でした.

図1.1 削れている車体側のリヤフェンダー裏の配線
 図1.1 はリヤフェンダ―裏側に取り回された配線の様子です.黒がアース,赤がストップランプ,白がナンバー灯兼尾灯の配線ですが,3本あるうちのアースとブレーキの2本がリヤフェンダ―の脱落によりリヤタイヤと接触して削れて断線していました.ナンバー灯兼尾灯もブレーキと共通の黒のアース線を使用している為,白い電源側は無事なものの点灯することができません.この配線の削れによる断線が各ランプが点灯しない原因であると断定できます.

図1.2 削れているストップランプ側のフェンダー裏の配線
 図1.2 はリヤフェンダ―に伸びていたストップランプからの配線をグロメットから引き抜きて確認した様子です.図の様にアース線が断線して内部の銅線が露出していました.またストップランプの配線も図1.3 の様に削れて半分になり,内部の銅線が露出していました.

図1.3 削れた配線の断面
 図1.3 は削れた配線を拡大して撮影した様子です.車体側は電源電圧がかかるため,短絡等の危険性が非常に高く危険な状態であると言えます.


【整備内容】
 削れた配線は修復不能であることから,その前後から新しい配線を使用して各部を接続し直すことで対応しました.

図2.1 新規に作成・接続されたストップランプ側の配線
 図2.1 は新規に作成・接続したストップランプ側の配線の様子です.リヤフェンダ―側も同様に配線を作成し,端子はギボシ加工で対処しました.これにより確実な回路の接続だけでなく,配線も若返り今後の仕事が期待できるようになりました.
 またリヤフェンダは適切なボルトを使用して確実に取り付けるとともに,リヤフェンダ裏側の配線もクランプを使用して再度脱落しない様に確実に取り付けました.

図2.2 正確に点灯しているリヤストップランプ
 図2.2 は修理の完了したリヤストップランプの配線の動作を確認している様子です.ナンバー灯兼尾灯,ブレーキランプのすべてが問題なく動作していることを確認して整備を完了しました.


【考察】 
 今回の不具合の元凶はリヤフェンダ―が脱落したことです.それにより内側に取り回されていた配線がリヤタイヤと接触して削れ,断線して各ランプが点灯しなくなっていました.物理的な直接の原因は配線の断線ですが,それに至る原因はリヤフェンダ―の脱落です.

 このリヤフェンダ―はFRPと推測される素材でできていることから社外品であると言えますが,リヤランプASSYへの配線の取り回しがフェンダーの裏側になっていました.しかもただ両面テープで配線がフェンダー裏に固定されているだけで,非常に安易な造りになっていました.フェンダーの車体への取り付けは前側に6mmのねじが2本,後ろの左右に8mmのボルトが各1本となっていますが,入庫時には左側の8mmボルトおよびナットが紛失していてフェンダーの左側がぶらんと脱落している状態でした.すこし上下に動かせば容易にリヤタイヤに接触する為,走行中は幾度となくタイヤに接触していたはずです.そしてその都度フェンダー裏にテープ留めされた配線がダメージを受け,断線に至ったものであると考えられます.このリヤフェンダ―はFRPといえどもかなり重く,ボルトが1本なくなっただけでこの様な運動をしてしまったと推測されます.

 つまり,ボルトが1か所外れたことにより各ランプ類が点灯しなくなったとまとめることができます.本来外れるはずのない8mmのボルトですが,全く点検しなければ,例え50ccでも単気筒の振動は無視できず,緩んで外れることもあるのです.この車両は同時に摩耗し切ったリヤスプロケット ※1 の交換も実施しましたが,やはり通勤に使う車両であれば,最低限定期的に点検整備される必要があることを強く印象付けた事例となりました.


※1 極度に摩耗したスプロケットによる走行時の伸びきったチェーンのコマ飛びについて





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