トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 車体関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:121~130)


事例:S-128

極度に摩耗したスプロケットと伸びきったチェーンによる走行中の異音とコマ飛びについて

【整備車両】 
 マグナ フィフティ (AC13) MG50X MAGNA 50  推定年式 ―  参考走行距離:約30,000km
【不具合の状態】 
 ローギヤで加速するとチェーンがガリンッとコマ飛びする状態でした.
【点検結果】 
 この車両はチェーンが外れやすい,また異音が激しくローギヤで加速するとチェーンがガリンッとコマ飛びしてしまう状態になってしまったということでお客様のご依頼によりメガスピードにて整備を承ったものです.見るとなるほど確かにチェーンがガリンッと行きそうな感じでした.

図1.1 伸びきったチェーンと摩耗したスプロケット
 図1.1 は伸びきったチェーンの様子です.引き代がなくなる程度まで引いてもチェーンがたるんでいる状態でした.またリヤスプロケットが極度に摩耗している状態でした.

図1.2 摩耗しているリヤスプロケット
 図1.2 は車体から取り外した摩耗しているリヤドリブンスプロケットの様子です.時計と逆回り(CCW)すなわちチェーンの回転方向に向かってスプロケットの歯が削れて波の様になってしまっていることが分かります.



図1.3 折れる寸前の歯
 図1.3 は摩耗している歯の部分を拡大した様子です.回転方向に削られて,細った歯先は波打ち,いよいよポキッと折れんばかりの状態に陥っていました.この状態ではお客様が訴えられている通り,ローギヤでトルクをかけて駆動すれば,伸びきったチェーンがガリンッとコマ飛びするのも納得いきます.金属同士の異音も発生するわけです.これはかなり“イケナイ”状態であると言えます.


【整備内容】
 チェーンとリヤドリブンスプロケットを同時に新品に交換しました.


図2.1 新品のリヤドリブンスプロケット
 図2.1 は新品のリヤドリブンスプロケットの様子です.新品は図の様に歯の先端にも2mm程度の幅があります.この状態を考慮すれば,いかに取り外したスプロケットの歯が摩耗していたかが分かります.
 この車両はX型ですからその車体番号に合わせて取り寄せたのが図の形状のスプロケットです.取り外したものは初期型のS型のものですから,どこかで何らかの原因で初期型のスプロケットを取り付けられてしまった可能性があります.

図2.2 車体に取り付けられた新品のリヤドリブンスプロケットおよびチェーンの様子です.
 図2.2 は新品のリヤドリブンスプロケットおよび新品のチェーンを車体に取り付けた様子です.これにより安心安全が確保されました.


【考察】 
 今回の事例において入庫時にはローギヤで加速するとチェーンがコマ飛びするという状態に陥っていました.それ以外のギヤでは加速できたということですが,それも時間の問題で,スプロケットの波状になった歯がポロッとなれば,何速に入れても加速せず完全にチェーンが滑る状態になり,おそらくその前に歯から脱落してチェーンが外れることになります.また同時に発生していたリヤフェンダ―の脱落により,ストップランプやナンバー灯兼尾灯がすべて点灯しない ※1 という状況からも,整備が足りないことを裏付けています.

 この車両は通勤に使用されていたものであり,整備するのであれば休みの日しかないという状態でした.そのような条件下の場合,ついつい整備を先延ばしにしてしまう傾向があります.ですが,通勤で使用するからこそ確実なバイクの動作が必要であり,遅刻しそうな朝にエンジンがかからないとか,重要な会議のある日に限って道中で走行不能に陥るといったことが発生すれば,損失は整備料をはるかに上回ります.したがって,本来レジャーで使用するものよりもより一層通勤に使用される車両の整備には気を遣わなければならないのです.この事例のスプロケットを見ても,もう少し早く交換しておくべきであると言え,お客様に助言させていただく運びとなりました.


※1 リヤフェンダ―の脱落によるストップランプ配線の断線について





Copyright © MEGA-speed. All rights reserved.