トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 電装関係の故障、不具合、定期点検、一般修理の事例 (事例:61~70)


事例:D-61

レギュレータの故障による充電不良と電圧計の設置について

【整備車両】 
  RG500EW-2W (HM31A) RG500Γ(ガンマ) 2型  年式:1986年  参考走行距離:約16,000 km
【不具合の状態】 
  エンジンはかかるものの,ヘッドライトやウインカ,メータインジケータ等が点灯しない状態でした.
【点検結果】 
 この車両はエンジンがかかり走行できるものの,ヘッドライトが点灯しない,ウインカーが点滅しない,メータ内部のインジケータが点灯しない等の不具合が発生していた為,メガスピードにて点検整備を承ったものです.

図1.1 I/G・OFFでのバッテリ電圧
 図1.1はイグニションをOFFにした状態の無負荷のバッテリ電圧を測定した様子です.本来満充電で13.2V程度あるはずの電圧が4.5V前後しかありませんでした.

図1.2 I/G・ONでのバッテリ電圧
 図1.2はイグニションキーをONにした状態でのバッテリ電圧を測定した様子です.50mV程度しかなく,全く灯火類を作動させることができない状態でした.以上の測定結果からバッテリは使用できないと判断し,発電系統の点検に移りました.

図1.3 ステータコイルの抵抗測定
 図1.3はレギュレータに接続されるカプラ部でステータコイルの抵抗を測定した様子です.三相とも約0.7Ω程度で正常でした.この部位で測定すればステータコイル巻き始めからレギュレータ部までの全域の断線および抵抗を調べたことになります.次に発電部の実際の機械的な状態を点検しました.

図1.4 フライホイールマグネトの点検
 図1.4はフライホイールを取り外した様子です.内側のマグネトに大きな不具合は見られず,年式を考えれば錆も皆無で非常に良好な状態でした.

図1.5 ステータコイルの点検
 図1.5はステータコイルを取り外して点検している様子です.すでにレギュレータ接続部のカプラで簡易的な点検は完了していますが,実際にコイルの状態等を見ておくことが大切です.この車両のコイルは損傷等もなく非常に良好な状態でした.

図1.6 レギュレータ一側端子の抵抗測定➀
 図1.6はレギュレータ側の三相交流が入力される部位の端子の抵抗値を測定した様子です.整備書にも予め抵抗値はあくまで参考程度にとどめること,と断りがある様に,測定値から部品の良し悪しは判断できませんが,参考までに測定したところ,全く参考値とかけ離れた数値を確認しました.

図1.7 レギュレータ側端子の抵抗測定②
 図1.7はレギュレータのバッテリへ出力される側の端子の抵抗値を測定した様子です.断線していることが分かります.これもあくまでも参考に過ぎませんが,故障と判断される測定結果になります.
 以上,バッテリ,発電機,充電・整流器の各部の点検結果から消去法かつ参考値と照らし合わせた結果,レギュレータの故障と推定し,レギュレータの新品交換が必要であると判断しました.

図1.8 不具合の発生していると推測されるレギュレータ
 図1.8は取り外したレギュレータの様子です.おそらく発売当時から使用されていたと推測されます.発売時期を考えれば半導体部品が数十年使用できたことそのものを評価すべきであり,『今までご苦労様でした』と,ねぎらいの言葉をかけたいと思います.


【整備内容】
 故障診断により充電不良はレギュレータの故障と判断し,レギュレータを新品に交換しました.

図2.1 新品のレギュレータ
 図2.1は新品のレギュレータの様子です.取り外した古いものと比較すると,レギュレータからのプラスとマイナスの配線が逆になっていますが,カプラの時点で同じようになっているので,そのままカプラーONで交換することが可能です.

図2.2 車両に取り付けられた新品のレギュレータ
 図2.2は新品のレギュレータを車両に取り付けた様子です.取り付けスクリュも同時に新品に交換し,気分もリフレッシュしました.

図2.3 車両に取り付けられた新品のバッテリ
 図2.3は新品のバッテリを車両に取り付けた様子です.製品の精度が悪く,取り付けに際し端子を加工しなければなりませんでした ※1

図2.4 正常な電圧
 図2.4は新品の電圧計と水温計のコンビネーションメータを取り付けた様子です.充電系統を修理した場合は常に電圧をモニターできるよう,電圧計の設置が好ましいと言えます.黄色の楕円で囲んだ部位が電圧表示部ですが,3,500回転以上では全域で14.5V程度の充電が安定して行われ,良好であることを確認しました.

図2.5 違和感のないスクリーン廻り
 図2.5はフロントスクリーン周辺の様子です.新たに設置したメーターは本体がブラックであり,ステーもブラック塗装している為ほとんど目立ちません.

図2.6 整備の完了したRG500Γ
 図2.6は良好な点検結果を確認して試運転から帰ってきた様子です.まだまだ元気に走ってくれることが期待できます.


【考察】 
 バッテリが充電されない場合,その大半がレギュレータの故障による充電不良です.しかし中には発電そのものが行われていない故障もあります.したがって,

  
➀ 発電はしているが,整流・充電していない
  ② 整流・充電機能は問題ないが,その前に発電そのものをしていない
  ③ 発電も整流・充電機能もともに故障している
  ④ 発電も充電・整流機能も正常だがバッテリが異常で充電を受け付けない


という4つを最低限考えなければなりません.
もちろんレギュレータを交換してバッテリが正常に充電されていれば,それが故障原因であると考えることができますし,それで事を終わりにすることが可能です.しかしこの車両の様に発売から数十年経過しているものが故障したのであれば,やはり根幹である発電機から押さえておかなければならないと私は考えます.きちんと点検しておけば安心することができます.確かにフライホイールを外してステータコイルまで点検するのは大変ですが,やっておけば安心して乗ることができます.それを省けば,例えバッテリが充電されるようになったとしても,発電系統は大丈夫かなぁという不安がその後もずっとついて回り,乗るたびにビクビクし,遠出するにも勇気が必要になります.それはストレス以外の何者でもありません.わざわざストレスを溜める為に貴重な時間を使ってバイクに乗るようなものです.したがってその様な事態に陥らないようメガスピードでは安心して乗っていただけるよう包括的な点検整備を実施しています.

 今回の事例では弱って充電を受け付けないバッテリも新品に交換しました.やはり発電,整流・充電機能が正常でも,異常なバッテリを使い続ければ,レギュレータの故障原因になります.ですのでレギュレータを新品に交換するときにはあわせてバッテリも新品に交換しておくことが非常に重要であると言えます.そして充電系統が不具合を起こしてそれを整備した場合は,その後も状態を常にモニタリングできるように可能な限り電圧計を設置することが望ましいと言えます.


※1 製造段階でのバッテリ端子マイナス側の加工不良について





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