製造段階でのバッテリ端子マイナス側の加工不良について |
【整備車両】
RG500EW (HM31A) RG500Γ 年式:1986年 参考走行距離:約16,000 km |
|
【不具合の状態】
エンジンはかかるものの,ヘッドライトやウインカ,メータインジケータ等が点灯しない状態でした. |
|
【点検結果】
この車両はエンジンがかかり走行できるものの,ヘッドライトが点灯しない,ウインカーが点滅しない,メータ内部のインジケータが点灯しない等の不具合が発生していた為,メガスピードにて点検整備を承ったものです.今回の事例ではその際に交換した新品バッテリーの不具合について記載します. |
図1.1は取り付けられていたバッテリの電圧を測定した様子です.無負荷電圧が4.58Vしかなく全く機能していない状態でした.この様な状況に至ったのは,点検の結果,レギュレータの故障による充電不良が原因でしたが,万全を期して同時に弱ったバッテリも新品に交換しました. |
|
【整備内容】
充電しない原因はレギュレータの故障でしたが,バッテリも新品に交換しました. |
図2.1は新品のバッテリ端子マイナス側の様子です.お客様にウェブで購入していただき当社に発送していただいたものですが,加工精度に問題があるようで,ボルトがマイナス端子の穴に入らな状態でした. |
図2.2は端子に取り付けボルトが入らない様子です.ボルトはM5サイズですが,指でかなり力を入れても穴が小さ過ぎて全く入りませんでした.何もせずにすぐに使用したい一般ユーザーは頭を抱えることになります. |
図2.3は端子の穴をM5サイズに合わせてドリルで加工している様子です.こんなことをしなければ使用できないのであれば,一般ユーザーにとって緊急事にはまず使い物になりません.例え購入するのが当社のような自動車整備工場であったとしても,できればこの様な手間は避けたいところです. |
図2.4はマイナス端子を加工して正常に取り付けられたバッテリの様子です.同時に劣化していたバッテリバンドも新品に交換しました.
そして水温計と電圧計のコンビネーションメータを取り付け試運転を実施し,充電系統の整備により新品バッテリのもとで電圧が14.5V程度で安定していることを確認して整備を完了しました. |
|
【考察】
安かろう悪かろう,という言葉があります.モノは安ければ購入する側にとっては嬉しいものです.しかし安く作ろうとすれば必ず手抜きしなければなりません.もし私が300円でフランス料理のフルコースを作れと言われれば,表の駐車場から雑草をむしってきてオードブルを作るしかない ※1 ,というのも同じ理由です.もっともメガスピードの技術水準を損なわない為に,私が安く仕事をすることはありませんが,根本は同じことです.
このバッテリについてはマイナス端子の穴の加工がいい加減で小さかったため,付属していたボルトが入りませんでした.他の同じ容量のバッテリ価格と比較して8分の1程度の値段でしたが,その値段で作るのであれば,人件費を削って大量生産するしかないと言え,いわば突貫工事の産物であると換言することができます.
この事例で私が言いたいことは,安いバッテリも賢い消費者として選択肢の一つに挙げられますが,中にはこの事例の様に即効性が薄い製品もあると言うことです.そしてこの様なバッテリを掴んでしまえば加工するしかなく,一般ユーザーがその場で瞬時に対応できるものでは無いと言うことです.まして出先でバッテリが上がったから代替えするという用途には使えない可能性が高いことを考慮しておかなければなりません.安くても最低限の性能があれば,それはそれで良いと思います.しかしその性能を試すにもまずはバッテリを取り付けなければならず,その段階で出鼻をくじかれるようでは,安かろう悪かろうといった慣用をあてはめられても仕方のないことです.しかしその安物を使うという選択肢を選んだ時点で,ある程度品質が悪くても仕方がないという覚悟をしなければならないということも忘れてはなりません.
メガスピードではお客様から送っていただいた部品や商品の取り付けを実施しております.例えばバッテリにしても,何を選ぶかはお客様の判断を尊重しております.もちろん今回の様な事例に遭遇すれば,それに対応して整備を進めているので安心して整備をご依頼いただける環境にあります. |
|
|
|