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事例:D‐40

オイルレベルスイッチハーネス側配線の破損による短絡の危険性について


【整備車両】

 RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型  推定年式:1983年  (参考)走行距離:約9,200km


【不具合の状態】

 オイルレベルスイッチへのハーネス側の配線に被覆が破損し銅線が露出している部分がありました.


【点検結果】

 この車両は吹け上がりの悪い回転域が存在する
※1 ということでメガスピードにて整備を承ったものです.

今回は,修理の際に気づいたオイルレベルスイッチへのハーネス側の配線の不具合について記載します.



図1.1 絶縁テープの剥がれかけている車体側のオイルレベルスイッチ配線

 図1.1は車体側のメインハーネスから出ているオイルレベルスイッチの配線の様子です.

本来ないはずの絶縁テープが巻かれていて,それが剥がれかけていました.

またギボシの被覆が茶褐色に変色しているため内部の接続状態が把握し辛い状態でした.



図1.2 銅線の剥き出しになっている配線

 図1.2は剥がれかけていた絶縁テープを除去した様子です.

案の定,赤色の矢印で示したプラス側もマイナス側も共に被覆が破損し内部の銅線が露出していました.

特にマイナス側の被覆の破損具合が大きいといえます.

プラス側の青/白には常に12Vの電源電圧がかかっているため,万が一エンジン等と接触すれば短絡し,

発生するスパークにより引火して車両火災を引き起こす原因になります.

また青色の矢印で示したギボシと配線の付け根も内部の銅線が露出していることが分かります.

これは同様のオイルレベルスイッチを採用している車両に多く見られることですが,

燃料タンクを取り外す際にこのギボシが毎回脱着されるため,

どうしても付け根が疲労し配線が損傷しています.



【整備内容】

 銅線の剥き出しになっている部位は使用に耐えられないと判断し,

その手前の生きている部位で切断し,ギボシ加工しました.



図2.1 ギボシ加工されたメインハーネス側のオイルレベルスイッチ配線

 図2.1はギボシ加工したメインハーネス側のオイルレベルスイッチの様子です.

プラス側の青/白は絶縁性能を保持するためメス端子,マイナス側の黒/白はオス端子で製作しました.




図2.2 延長コード

 図2.2は露出していた銅線手前のハーネス側で配線を切断したために短くなった分を,

新たに新品のギボシ端子及び配線で作成したものです.

これにより本来の適正な長さ+αでオイルレベルスイッチまで送電できるようになりました.



図2.3 延長されたハーネス側の配線

 図2.3は被覆が破れて内部の銅線が露出していた部分の配線を修復した様子です.

延長した部位に関してはコルゲートチューブで保護することにより,擦れによる破損の防止を図りました.



図2.4 オイルレベルスイッチの配線と接続されたハーネス側の配線

 図2.4は製作したハーネス側の配線にオイルレベルスイッチ側の配線を接続した様子です.

被覆が新品になったことにより,内部の接続状態が容易に把握できるようになりました.

黄色の矢印で示した部分は熱収縮タイプの絶縁被覆で端子を処理したものです.

これはオイルレベルスイッチが純正新品の部品で入荷された際には,

オス側の端子に何も絶縁処理がなされていない
※2 ため,

そのまま接続した状態ではギボシの被覆が端子ギリギリになることから,

短絡の危険性が排除できず,その防止対策をしました.



図2.5 メインハーネスとオイルレベルスイッチへの配線の接続

 図2.5はメインハーネスからオイルレベルスイッチへの配線を接続した様子です.

適切な長さに延長したため配線を引っ張ることなく確実に接続されていることが分かります.




【考察】

 この車両はメガスピードで整備を承る直前に他店でキャブレータの整備がされたとするものですが,

少なくとも燃料タンクを取り外した際にオイルレベルスイッチのギボシ端子を外す必要があり,

その時に配線の不具合が目についた可能性があるといえます.

問題は配線の不具合の可能性について気づいたのであれば,そこで修理がなされるか否かとうことです.

メガスピードにて整備を実施した際に,絶縁テープが剥がれかけているのに気づき,

本来あるはずのない部位にテープが巻かれているのは,その部分に何らかの不具合があると推測しました.

結果として実際に銅線が剥き出しになっていたのですが,

そこまで確認した際に,テープを元に戻して見なかったことにするのか,

きちんと修理して短絡しないようにするのかで,その後の安心感は全く別次元のものになります.


 確かに見なかったことにすれば,余計な仕事が増えずに楽でしょう.

しかし機械に自己修復機能はなく,いづれ露呈する不具合です.

そうであれば,例え当初の整備計画のご依頼にないもので,

費用が施工側の持ち出しになったとしても,やはり修理すべきであると私は考えます.

なぜなら逆の立場で,私が修理をお願いしたのであれば,

その時に露呈した不具合を見て見ぬふりをされては悲しくなるからです.

本当に大切なのは,お客様の立場に立って,どう感じるかということに尽きます.

すべての事象はそこに帰結し,それが究極であると考えます.


 どこまで見るか,それは非常に難しい問題です.

しかし少なくとも明らかにダメな部位に関しては,

極力修理を行い安全に乗っていただきたいと願うのは,整備技術者共通の思いであるはずです.





※1 吹け上がりの引っ掛かりと空燃比の狂いについて

※2 オイルレベルスイッチ配線の破損と剥き出しのギボシ端子について






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