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事例:D-48

車両中央部のメインハーネス被覆の破れについて

【整備車両】 
 R1-Z (3XC) 3XC1  推定年式:1991年  参考走行距離:15,200 km
【不具合の状態】 
 メインハーネスの被覆が破れていました.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードで整備を承る前に他店でヘッドガスケットおよびピストンリングを交換したとされるものです.当社で点検したところリザーバタンクには全く冷却水が入っておらず,ラジエータにもキャップ口元付近は冷却水が無い状態でした ※1 .これではオーバーヒートに陥る危険性があります.各部に異常が見られましたが,今回の事例では,破れていたメインハーネスについて記載します.

図1.1 数か所にわたり保護被覆が破れているメインハーネス
 図1.1は車体中央部のメインハーネスが破損している様子です.保護被覆が劣化して全体的に脆く薄くなっていて,黄色の円で囲んだ箇所は破れて内部の配線が露出していました.この状態ではやがて内部の配線被覆も傷つき損傷する可能性があります.その他の部位ではステータコイルにつながる被覆の破れ ※2 等も発生していました.


【整備内容】
 メインハーネスの破損していた箇所を中心に全体的に絶縁テープで補修しました.

図2.1 絶縁テープで補修されたメインハーネス
 図2.1は絶縁テープで補修したメインハーネスの様子です.車体後方から二分の一ラップで絶縁しました.これにより内部の各配線がこれ以上損傷する危険性を回避することができました.


【考察】 
 発売から20年以上経過した車両を整備していると,メインハーネスの被覆がが今回の事例の様に破れているケースが少なくありません.特に中央部にその傾向が多く見られるのは,エアクリーナやキャブレータを脱着する際にハーネスにこすったりすることが大きな原因の1つではないかと推測されます.被覆がゴムという材質そのものの劣化も同時に影響している為,もはやハーネスの被覆は消耗部位であると考える方が良いかもしれません.
 メインハーネスの被覆が破れていたという現象について,私は決して軽々しく捉えるべきではないという立場をとります.なぜならメインハーネス中央部は本来車両に固定されており自ら動くことはなく,そのメインハーネスが擦れて破れるということは,相当な繰り返しの人為的接触があったことを示し,それはその部位だけでなく,それだけの接触を引き起こしたという事実,すなわちそれだけの接触を起こさなければならなかった理由が車両全体に影響しているということを無視できないからです.つまり分かり易く言えば,車両全体がその様に劣化している,あるいは未熟な素人整備により状態が悪化している,という1つのサインであるからです.したがって,メインハーネスがこの様な状態になっていた場合は,車両全体の点検整備が必要であることを付け加えておかなければなりません.


※1 空になったリザーバタンクとラジエータ内の冷却水不足によるオーバーヒートの危険性について
※2 
ステータコイル配線被覆の破れと取り付けボルトのナメについて





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