試運転時において鋭利な金属が刺さったことによるリヤタイヤのパンクについて |
【整備車両】
RG500EW-2W (HM31A) RG500Γ(ガンマ) 2型 年式:1986年 参考走行距離: 19,000 km |
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【不具合の状態】
試運転から戻ると,何と交換したばかりのリヤタイヤに鋭利な金属が刺さっていました!! |
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【点検結果】
この車両はオイルアウトレットの裂けによりオイル漏れが発生していた ※1 もので,お客様のご依頼により保管場所まで引き取りにお伺いしたものです.その修理を終え一般道30km程の試運転を実施しましたが,整備工場に帰ってくると,何と交換したばかりのリヤタイヤに鋭利な金属が突き刺さっているではありませんか!! |
図1.1 はリヤタイヤに鋭く突き刺さる金属の様子です.試運転から整備工場に戻り全体的に点検していると,この様なショッキングな場面に出くわしました.本当に見事に,あたかも鬼の角の様に排水溝に突き刺さっています.長年バイクに乗っている中でタイヤに異物が刺さるのは初めてです.しかもお客様の車両の試運転中に発生するとは・・・ 帰ってくるまで普通に走行できたことから空気漏れはほとんど発生していないと推測しました.実際に空気圧を測ると190kPa残っていて,ほとんど抜けていませんでした.
問題はバイクのチューブレスタイヤはパンク修理してもその形状から完全には直らないケースが非常に多いことです.したがって,やむなく新品に交換することにしました. |
図1.2 はタイヤを剥がして裏側から状態を確認した様子です.内側にもこの様にかなり長く突き出ていました.まったく身に覚えがないとはまさにこのことです.おそらく前輪で巻き上げ,後輪で踏んづけたものだと考えられます.試運転のルートは片側2車線の国道および高速がメインで,それ以外はなるべく整備された道路を選んで走行していますが,それでもタイヤがパンクするのは確率論でしかないのかと,理不尽さを感じました.仕事柄バイクに乗る機会が非常に多いので,むしろ今までパンクしたことが無かった方がラッキーだったのかもしれません.
まさに・・・ 大当たりといったところです.今年は宝くじも当たるかも!? |
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【整備内容】
気を取り直して,一番安心確実な整備方法すなわちリヤタイヤの新品交換に着手しました. |
図2.1 は新品のリヤタイヤの様子です.RG500/400Γの純正ホイールでは定番のBT-45Vになります.わざわざホイールを太くしなくても,普通に乗るのであればまずこれで十分です. |
図2.2 は新品のリヤタイヤをホイールに組み付けバランス調整を行った様子です.30km程試運転を実施し,問題がないことを確認して整備を完了しました.もちろん整備工場に戻ってリヤタイヤを全周点検し,何も刺さっていないことを確認しました.どうやら2連続にはならずに済みました. |
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【考察】
空気圧を調整するといった日々のメンテナンスがされていることを前提とするならば,もはやタイヤのパンクは確率論です.徐行時ならまだしも法定速度で交通量の多い場所を走行するのであれば,路面を凝視しているわけにも行きません.ですので何も落ちていないことが前提として走ることになります.二輪のタイヤが車線の幅に対して通る軌跡は,その広さの数分の一です.そしてそこに釘の様な鋭利な硬いものが落ちている確率,落ちていたとしても踏まない確率,踏んだとしても刺さらない確率,それらを掛け合わせると,まず今回の様な見事なパンクにはならないと思えます.しかし走行するたびにその確率にさらされ続けるわけですから,やはり刺さるときには刺さるのかもしれません.宝くじも買い続ければ当たる確率が増えるように,バイクも走り続ければパンクする確率も増加するのは自然なことです.
初めてバイクで異物を踏んだ感想として述べると,はっきり言って防げないです.もう運です.まったく心当たりがないです.しかも2スト4気筒はノーマルでも振動や排気音が大きいので,法定速度ではいつ踏んだかも分かりません(高速だったらもう少し症状が出るかもしれません)。もしかしたら整備工場に戻る寸前で踏んだことにより走行による症状が無くエア漏れもわずかだったのかもしれませんが,実際はどうだったのか分かる術がありません.とにかくなるべく異物が落ちてなさそうな場所を走るしかありません.しかしそれでも刺さる時は刺さるでしょう.
もし刺さってしまったら,やはり修理ではなく新品交換が望ましいと言えます.修理ではその後再び漏れる確率が高いからです.幸いタイヤというものは大手メーカーの製造する消耗品であり,費用を支払えばフレッシュな新品が手に入ります.絶版部品の塊のようなバイクばかり整備している立場からすれば,それは非常に楽であり,ありがたいことです.ですので異物を踏んでパンクしても気を落とす必要はありません. ・・・そう自分に言い聞かせるしかないのです. |
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