トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 車体関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:131~140)


事例:S-133

ボルトの曲りおよびナットの緩みにより外れかけていたサイドスタンドについて

【整備車両】 
 GPZ400R (ZX400D) ZX400-D3  年式:1987年  参考走行距離:約19,000 km
【不具合の状態】 
 サイドスタンドがグラグラしている状態でした。
【点検結果】 
 この車両はミッションカウンタシャフトからのオイル漏れ ※1 等の不具合が発生していた為、お客様のご依頼によりメガスピードにて整備を承ったものです。お預かり中にフロントフォークからオイルが漏れ出す ※2 等の不具合もありましたが、ここでは外れかかっていたサイドスタンドについて記載します。

図1.1 グラついているサイドスタンド
 図1.1 はボルトが外れかかっていてグラグラしているサイドスタンドの様子です。黄色の円(A)で囲んだ部位のボルトはきちんと締め付けられておらず、5mm程度抜けてグラグラしていました。

図1.2 サイドスタンド取り付け部裏側
 図1.2 はサイドスタンド取り付け部の裏側の様子です。本来はボルト締めで終わりの設計ですが、緩んでいた方はナットが取り付けられています。この様な事態に陥っている場合、大抵ネジ溝がダメになっておりボルトナットで仕方なく取り付けられているケースが少なくありません。

図1.3 ネジ溝が破損し、全体的に曲がっているボルト
 図1.3 はボルトのみで取り付けられていた部位のボルトの様子です。辛うじて締まっていましたが、ネジ溝が破損している上全体的に曲がっていました。また車体側のネジ溝も破損していました。

図1.4 取り外した不具合のあるサイドスタンド取り付けボルト
 図1.4 は取り外したサイドスタンド取り付けボルトの様子です。なぜこのような状態に陥っていたかは分かりませんが、少なくとも過去に作業した人がやっつけ仕事でやったものであると考えらえます。


【整備内容】
 車体側のネジ溝を修正して使用するよりも、2か所ともボルトナットで確実に締め付けた方が良いと判断しました。

図2.1 新品のボルト、スプリングワッシャおよびセルフロックナット
 図2.1 は新品のボルトとそのスプリングワッシャ、セルフロックナットの様子です。スプリングワッシャとセルフロックナットを使用することで、サイドスタンドという重要部品を確実に取り付けました。

図2.2 確実に取り付けられたサイドスタンド
 図2.2 は新品のボルト、スプリングワッシャ、セルフロックナットを使用して確実に取り付けられたサイドスタンドの様子です。これにより安心して車体を立てておくことができるようになりました。

図2.3 整備の完了した車体のサイドスタンド廻りの様子
 図2.3 は全体の整備を完了してカウルをつけた車体のサイドスタンド周囲の様子です。試運転を繰り返し、問題ないことを確認して整備を完了しました。


【考察】
 タイヤを除けば車体を支える唯一の部品がサイドスタンドです。それがこの事例の様な状態ではいつ転倒してもおかしくありません。今でこそ安定して車体を静止させておくことができますが、お預かりした段階ではかなり不安定でした。

 サイドスタンド取り付けの不具合は、過去の作業者が未熟な整備をした結果であるとしか言いようがありませんが、フルカウルの車両であれば、損害はひとコケ何万円という世界です。ライダーのミスでの立ちゴケ等であれば仕方ありませんが、サイドスタンドの取り付け不良でコケたのでは浮かばれません。したがってその様な事態に陥らないようにする為にも、時折サイドスタンドの状態を点検することが大切です。この事例の様に無責任な整備の仕方で取り付け不良の発生している中古車も多々ありますが、スタンドの取り付けボルトおよびナットが緩んでいる車両も少なくありません。それほど負荷のかかる部位であると言えます。

 保管時には、あの細い金属棒が100kg以上の重さをライダーに代わってたった一本で支えているのですから、「緩みは大丈夫かい? いつもありがとう」と時々はねぎらいの言葉をかけてやるのもまた所有者の務めではないかと思うのです。



※1 ガソリン漏れによるオイルシールの変形がもたらすカウンタシャフトからのオイル漏れについて
※2 シールの経年劣化とストッパリングの入れ忘れにより発生したフォークオイル漏れについて





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