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劣化したホイールリムバルブの亀裂によるチューブタイヤの空気漏れについて


【整備車両】

RG400EW-W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) Ⅰ型  年式:1985年  参考走行距離:約12,400km


【不具合の状態】

劣化していたフロントタイヤのホイールリムバルブがちぎれて空気が漏れていました。


【点検結果】

エンジンのパワーが出ないという症状で入庫された車両の整備を完了し

試運転する前にタイヤの空気圧を点検したところ、

リムバルブにタイヤエアゲージを取り付けた瞬間にシューッと音がしました。

ひとまず現在の状況を把握する為に空気圧を測定すると内圧は150kPaでした。

バルブを傾けると付け根から空気が漏れているものの、触らなければ音はしない状態でした。

試運転前に230kPaまで空気を入れて20km程走行した後に確認すると、

元の76%にあたる175kPaまで圧力が減少していました。

すなわち20km程度の通常走行で、24%の空気が抜けていたことになります。




図1 、付け根がちぎれているリムバルブ

図1は劣化して付け根がちぎれていたリムバルブの様子です。

この状態で内部の通路が確認できる程亀裂が深くなっていることが分かります。




図2、切断したリムバルブの断面

図2はタイヤから取り外したリムバルブを切断した断面の様子です。

取り外す前はほとんどちぎれていて、全体の3割くらいの面積しかつながっていませんでした。

タイヤの空気は、バルブの下側の亀裂から抜け出していたと考えられます。

タイヤに空気を入れる場合やキャップの脱着等のメンテナンス時に、

リムバルブはホイールに取り付けられた状態では図2の断面に一番外力がかかります。

キャップが退色していないことや、ゴムそのものが大きく劣化していないことから、

亀裂は何らかのかたちで疲労してできた裂け目が成長したものであると推測できます。


【整備内容】

リムバルブはバルブシートと取り付けゴム部が一体になっているのでASSYで交換しました。


図3、ホイールに組み付けられた新品のリムバルブ

図3は新品のリムバルブを点検したホイールに組み付けた様子です。

試運転を行い、規定の空気圧を保持していることを確認して整備を完了しました。


【考察】

タイヤの空気は材質と構造上必ず漏れるので、定期的に点検する必要があります。

今回は業者から現状販売で車両を購入されたお客様が、

プラグがかぶりエンジンの吹け上がりが悪いということでメガスピードまで高速を使用して自走で来られましたが、

幸い空気圧の低下によるバースト等の大惨事には至りませんでした。

しかし安全性を考えると、特に高速走行ではタイヤの空気圧は適正な状態で使用されなければなりません。

当社でキャブレータの整備を完了し、試運転する直前に点検した段階で内圧は150kPaであったので、

これ以上の走行による空気圧の低下、特に高速での走行は非常に危険であったといえます。

やはり可能な限り高速走行される前にタイヤの空気圧は点検しておく必要があり、

空気が抜けてしまう場合は極力走行を控える必要があります。



リムバルブはバルブをコーティング、形成しているものがゴムなので、

使用や経年により必ず劣化します。

リムバルブそのものは構造が簡単で比較的小さな部品ですが、

交換する為にはタイヤをホイールから取り外さなければならず、外部から簡単に作業することはできません。

やはりタイヤの交換時期はリムバルブの交換時期と考えて、

タイヤ交換の際に合わせて新しいものに交換しておくことが望ましいといえます。





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