【考察】
メガスピードでは各部の分解整備を承った場合,整備期間中にフォークオイルが漏れ出す事例が少なくありません.今回の事例でも同様に,フォークオイルの劣化具合やインナーチューブの錆,そしてオイルシールの状態から判断すれば,漏れる寸前でお預かりしたと推測することができます.
実際に漏れたのはお預かりして静止状態で保管している状況において,ひと月程度経過してからですが,右が漏れていれば,左右同じ環境で乗られていたとするならば,左も近い将来漏れ出す可能性が高い為,今回の整備では両側のフォークの分解整備を実施しました.
フォークオイルがシール部から漏れ出す頃にはオイルの状態も劣悪になっている為,乗り心地が悪くなっている場合が少なくありません.所有しているバイクに乗り続けるということは,いわば縦断的観察に近く,変化の度合いが緩やかな場合は,その変化そのものに慣れてしまい,性能の低下に気付き辛い傾向があります.しかし分解整備いわゆるオーバーホール【overhaul】を実施して乗り比べれば,腰が出て路面への追従性も良くなっていることが分かることが多く,それだけサスペンションが衰損していたと言えます.例えるのであれば,ゆで過ぎて伸び切ったうどんを食べてから,温泉郷の腰のあるうどんを食べた時の歯応えの違いに近いかもしれません.もちろん腰があり過ぎると顎が疲れるのと同様に,サスペンションも腰があり過ぎるのは問題です.しかし,少なくともオイル漏れが発生するという状態は,かなり悪い状態であり,そこから整備されたサスペンションは別物であると言っても過言ではありません.
特にこの車両の様に中古で購入された場合は,この車種のサスペンションはこんなものかな,と無理に納得することなく,一度分解整備を実施してデフォルト状態を体感しておくことをお勧めします.そしてそれを体感して初めて,20年前30年前のバイクに対して,この車種は足廻りが良いだのダメだのという権利が生じるのだと思うのです.
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