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事例:S-95

転倒による削れと変形で工具のかからなくなったフロントアクスルの頭について

【整備車両】 
  R1-Z (3XC) 3XC1  推定年式:1991年  参考走行距離:約15,200km
【不具合の状態】 
 アクスルシャフトの頭が削れて変形していて工具がかからない状態でした.
【点検結果】 
  この車両はメガスピードで整備を承る前に他店でヘッドガスケットおよびピストンリングを交換したとされるものです.当社で点検したところリザーバタンクには全く冷却水が入っておらず,ラジエータにもキャップ口元付近は冷却水が無い状態でした ※1 これではオーバーヒートに陥る危険性があります.その他各部に異常が見られましたが,今回の事例では,変形している為に工具がかけられないアクスルシャフトについて記載します.

図1.1 変形しているアクスルシャフトの頭
 図1.1の黒円で囲んだ部分はアクスルシャフトのボルトの頭です.転倒によると見られる傷があり,変形していました.それにより工具がボルトの頭にかからず,容易にアクスルを緩めたり締め付けたりすることができない状態でした.

図1.2 一方向に削れているボルトの頭
 図1.2は破損しているアクスルボルトの頭の様子です.左下から右上にかけて流れる様に傷跡があることから転倒した際に発生したものであると推定することができます.流れて盛り上がった部分を削るなりして処理しなければ工具が入らない状態でした.これでは今後のフロントホイールやフロントフォークを中心とした足廻りのメンテナンスに支障が出兼ねません.


【整備内容】
 
フロント足廻りの整備性の確保を目的として,アクスルを新品に交換しました.もちろん修正可能ですが,新品部品の供給があった為,性能と金属疲労,そして見た目の美しさを考えれば交換しないという選択肢はありません.

図2.1 新品のアクスルシャフトの頭部
 図2.1は新品のアクスルシャフトの頭の様子です.性能の回復はもとより,その光沢を取り戻すことが出来たのは非常に大きなプラスポイントになります.いくら性能が回復しても,取り外したシャフトの様に錆びて色褪せしていたのでは話にならないのです.

図2.2 新品のアクスルシャフト
 図2.2は新品のアクスルシャフト全体の様子です.ホイールベアリングの受けになっていた部位を始め,多かれ少なかれ摩耗,疲労している部位が新品になったことは,今後長年乗り続ける上で大きなメリットであると言えます.

図2.3 整備の完了したフロントアクスル廻り
 図2.3は新品のアクスルを使用してホイールをフォークに取り付けた様子です.アクスルを固定する黒のボルト2本も同時に交換し,外観の美しさを取り戻すことができました.図1.1と比較すれば明らかですが,アクスルボルトの頭が光沢を取り戻すことにより,その周囲が非常に引き締まった印象をもたらす為,特にドレスアップとしてもこの部品の重要性が理解できるはずです.
 また今回の整備では同時に動きの悪くなっていたホイールベアリングを新品に交換することにより,軸と軸受けの両方が新品になり,ホイールの動きがスムーズになりました.


【考察】 
 フロントアクスルが削れている場合,その大半が転倒による傷であると推定されます.したがってその場合は同様な角度の部品をすべて点検し,削れている部位あるいは亀裂の入っている部位がないかどうかしっかり点検しておくことが大切です.
 性能だけを考えた時,今回の事例では必ずしもフロントアクスルを交換する必要はありません.しかしフロントホイールを外すにはアクスルを抜き取らなければならず,その為にはアクスルを緩めなければなりません.したがってアクスルの頭が損傷した状態では工具がかからず整備出来ないことから,最終的にはアクスルを修正または交換する流れになります.
 もし部品がなければ修正せざるを得ませんが,新品の供給があることから迷わず新品に交換しました.金属疲労の回復もさることながら,外観の美しさを取り戻す為には新品が一番だということに異論はありません.そして軸を新品にした場合は,軸受けもセットで同時に新品にしておくことが効果的であるということを付け加えておきます.


※1 空になったリザーバタンクとラジエータ内の冷却水不足によるオーバーヒートの危険性について





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