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事例:S-94

クッションの破損によりガタつきの発生していたフロントサイドカバーについて

【整備車両】 
 R1-Z (3XC) 3XC1  推定年式:1991年  参考走行距離:約15,200 km
【不具合の状態】 
 フロントサイドカバーの取り付けがガタガタしている状態でした.
【点検結果】 
  この車両はメガスピードで整備を承る前に他店でヘッドガスケットおよびピストンリングを交換したとされるものです.当社で点検したところリザーバタンクには全く冷却水が入っておらず,ラジエータにもキャップ口元付近は冷却水が無い状態でした ※1 これではオーバーヒートに陥る危険性があります.その他各部に異常が見られましたが,今回の事例では,ガタガタしていたフロントサイドカバーについて記載します.

図1.1 千切れているサイドカバーマウントクッション
 図1.1はフロントサイドカバーをフレームにマウントする緩衝材としてのクッションの様子です.ゴムが劣化して崩れてボロボロになっていました.これにより保持されるべき空間が欠損し,カバーとの間にすき間ができガタつきが発生していました.

図1.2 破損しているクッション
 図1.2は千切れていたクッションを取り外した様子です.材料がゴムであることからすれば経年により崩れるのは自然なことです.ここまで破損していればカバーを車体に保持する性能はほとんどなくなっていると言え,状況から1990年の発売当初から使用され続けていたものであると推測されます.

図1.3 汚れているフロントサイドカバー
 図1.3は取り外したフロントサイドカバー内側の様子です.内側にかなりの汚れが見られることから長期間手入れがされていなかったものであると推測されます.


【整備内容】
 クッションが修正不能なレベルまで破損していることや,経年等を考慮して新品に交換することで対応しました.

図2.1 清掃されたフロントサイドカバー
 図2.1は点検清掃したフロントサイドカバーの様子です.特に重要なのはクッションがはまり込む爪の部分ですが,2か所とも割れ欠けなく良好な状態を維持していました.

図2.2 新品のクッション
 図2.2は新品のクッションの様子です.取り外したものは触れるとボロボロ崩れる様な質感でしたが,新品は柔軟性に富み非常にやわらかく,カバー取り付けの際にある程度変形することにより車体に確実に保持することが期待されます.

図2.3 車体に取り付けられた新品のクッション
 図2.3は新品のクッションをフレームに取り付けた様子です.同時に錆びていたマウント部周辺のタッチアップを実施しました.

図2.4 確実に保持されたフロントサイドカバー
 図2.4はフロントサイドカバーを車体に取り付けた様子です.ガタつくことなく確実に保持されています.これにより振動によるカバーへのダメージを低減させることができました.


【考察】 
 バイクの外装ではカウルをはじめ,カバー等の固定にクッションを使用しているモデルが多々あります.そして古い車両ではカウルの爪やカバーの爪等プラスチック外装側に気を遣っている場合は多いものの,その受けであるクッションには無頓着であるケースが少なくありません.いくら爪に気をつけても,クッションがボロボロでは爪とのすき間が大きくなり,振動によりカウルやカバーの爪が受けるダメージが大きくなります.したがって,爪を大事にするのであれば,それと同じくらいクッション側にも気を遣わなければなりません.振動の大きい2サイクルエンジン搭載車両であれば尚更です.
 今回の事例ではクッションが大破していましたが幸いカバーの爪は無事でした.クッションは小さな部品であり,ともすると蔑にされがちですが,実際には振動を防ぎたい部品・部分に使用される非常に重要な部品であるということを頭に入れておく必要があり,且つそれは材料から考えても,消耗品であり為定期的に交換されることが望ましいと言えます.


※1 空になったリザーバタンクとラジエータ内の冷却水不足によるオーバーヒートの危険性について





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