トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:181~190)


事例:E-186

内径の大き過ぎる燃料ホース及び細いクリップによるガソリン漏れの危険性について


【整備車両】

 RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型  推定年式:1983年  参考実走行距離:約9,200km


【不具合の状態】

 不適切な燃料ホースおよびクリップによるガソリン漏れの危険性がありました.


【点検結果】

 この車両はエンジンの吹け上がりが悪い回転数が存在
※1 し,

またエンジン左下からオイルが漏れている
※2 ということでということでメガスピードにて点検整備を実施したものです.

今回の事例は不具合のある燃料ホースについて記載します.



図1.1 取り外した不具合のあるキャブレータ

 図1.1は取り外したキャブレータの様子です.

エアベントホースのホルダプレートが上下逆についていた
※3 り,

ドレンボルトがなめて固着していた
※4 り,

フロートチャンバの取り付けスクリュからガソリンが漏れていた
※5 り,と各部に不具合があることが分かりますが,

特に見た瞬間に違和感を覚えるのは燃料ホースをクランプするクリップです.



図1.2 不適切なホース及びクリップ

 図1.2は取り外した燃料ホースおよびクリップの様子です.

正規の寸法と比較してクリップが細い上に燃料ホースの内径が大きい状態でした.



図1.3 正規の燃料ホース(左)と不適切なホース

 図1.3は正規の寸法の新品の燃料ホース(左)と取り外した不適切な燃料ホースを比較した様子です.

取り外したホースは明らかに内径が大き過ぎるため,取り付け口に対して締りが緩くなり燃料漏れの発生原因になります.



図1.4 正規のクリップ(左)と不適切なクリップ

 図1.4は正規の寸法の新品のクリップ(左)と取り外した不適切なクリップを比較した様子です.

クリップの線径の違いからも容易に推測できることですが,

適切なクリップに対して取り外したクリップは締め付け力が格段に低いため,

燃料ホースからガソリン漏れが発生する原因になります.

総じて燃料ホースが緩く,クリップの締め付けが弱ければ,

どのような結果が待ち受けているかは想像に難くないといえるでしょう.



【整備内容】

 不適切だった燃料ホースとクリップを正規の新品に交換し,燃料漏れを確実に防止しました.



図2.1 整備の完了したキャブレータ連結部

 図2.1はオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)の完了した1番と2番キャブレータを,

正規の燃料ホースおよびクリップを使用して連結した様子です.

これにより燃料漏れの発生する可能性を極力低減することができました.

もちろんクリップをはじめ各部のスクリュ等が新品に交換されたことや,

キャブレータボデー,フロートチャンバといったキャブレータ本体を適切に洗浄することにより,

組み立て時の見た目の美しさを取り戻したことは言うまでもありません.

キャブレータは可能な限り輝いていなければならないのです.



考察】

 2輪自動車の中で,定期的に交換すべき最も重要な部品の1つとして,燃料ホースを挙げます.

というのは,燃料ホースの劣化は車両火災の原因となる可能性が非常に高いからです.

そして車両火災は最も避けなければならない事故といえ,それを防ぐ為には定期的な点検整備が必要です.

だからといってこの事例に見られるように,何でもかんでも付いていれば良いというものではありません.

パイプ外径に対する適切なホースの内径が存在するように,それを締め付けるクリップも同様です.


 しかし,もし初期ガンマを整備したことがない,あるいは見たことがないという場合は,

もしかしたらこの差異に気付くことができないかもしれません.

なぜなら外観だけでは図1.1の様に,一見左右を連結するホースは問題なく着いているように受け取れるからです.

もちろんそれは大きな落とし穴です.

そしてこのRG250Γ(GJ21A/21B) に使用されているVM28型キャブレータに精通していれば,

外観を見た瞬間に違和感に気づくことができますし,また気付かなければなりません.


 キャブレータだけでなく,すべての部位に共通して言えることですが,

ものを見た瞬間に分かるということは非常に大切であり,

特に未熟な整備をされてグチャグチャになっている様な基準の分からなくなっている古い車両に関しては,

尚更事細かに状態を確認することが必要であり,その能力が求められるのです.





※1 吹け上がりの引っ掛かりと空燃比の狂いについて

※2 トランスミッションカウンタシャフトからのオイル漏れと無理な整備による弊害について

※3 逆さまに付けられ更にねじられたエアベントホースガイドプレートについて

※4 腐敗したガソリンと錆の発生によるドレンボルトの固着となめた頭について

※5 フロートチャンバ取り付けスクリュの締め付けトルク不足によるガソリン漏れについて






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