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事例:E-182

吹け上がりの引っ掛かりと空燃比の狂いについて


【整備車両】

 RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型  推定年式:1983年  参考実走行距離:約9,200km


【不具合の状態】

 5000回転付近でエンジンの吹け上がりがひっかかる状態でした.


【点検結果】

 この車両は吹け上がりの悪い回転数が存在するということでメガスピードにて整備を承ったものです.

5000回転付近でひっかかるということですが,吹け上がりが悪い原因として,

エンジンの圧縮不足や空燃比の狂い,排気管の詰まり,点火不良,その他様々な要因が考えられます.

したがって,正しい手順で整備を実施しないと思わぬ落とし穴に陥る可能性が非常に高いといえ,

故障診断がすべてを制すると言っても過言ではないのです.



図1.1 エンジン2次圧縮の測定

 図1.1はエンジンのいわゆる2次圧縮を測定した様子です.

約980kPaと非常に良好な数値を示していることが分かります.

これは不具合のある場合に,その修理で一番費用のかかるエンジンの状態が正常であるかを検査したものであり,

正常であることを確認した上で次の工程に進む必要があります.

もしエンジンがダメな場合は,まずエンジンの修理から実施しなければなりません.




図1.2 カーボンの堆積しているスパークプラグ電極部

 図1.2は圧縮圧力測定の際に取り外したスパークプラグの様子です.

碍子部及び中心電極にカーボンが堆積しているだけでなく,

接地電極の外側にも著しくカーボンが堆積していることが分かります.

点火系統はこの段階までに,すでに点検して問題ないと判断している為,

空燃比の狂いが原因であると推測し,燃料系統の点検に移りました.



図1.3 取り外した不具合のあるキャブレータ

 図1.3は取り外したキャブレータのフロートチャンバを取り外した様子です.

フロートチャンバ締め付けスクリュから燃料漏れ
※1 が発生していたものの,

メガスピードに持ち込まれる直前に他店でフロートバルブASSYを交換したという経緯がある為,

中身は比較的綺麗でした.

しかしフロートバルブ以外の部品は経年劣化しており,疲れている様子が分かります.

また空燃比の狂いの原因も推測されました.



【整備内容】

 空燃比の狂いの原因となる手がかりも確たるものとして得られた為,

すべて分解洗浄して細かく点検することから整備を実施しました.




図2.1 新たに組み直されたキャブレータ内部

 図2.1は各部を詳細に洗浄,点検し,空燃比をセッティングし直して組み立てたキャブレータ内部の様子です.

確かにフロートバルブASSYは直前に他店で交換された様ですが,

私が行った整備ではないことから,今回同時に改めて新品に交換しました.

なぜならスクリュの締め付け不良等,他店の技量が全く信用するに値しないからです.



図2.2 理想的な焼け具合を示しているプラグ

 図2.2は整備後約20km程試運転を行ってから取り外したスパークプラグの様子です.

不具合の5000回転付近のひっかかりは解消され,レッドゾーンまで一気に吹け上がる様になりました.

理想的な焼け具合は,スムーズな始動及び吹け上がりの実現を裏付けています.

やはり調子の良い2サイクルエンジンは乗っていて楽しいものです.



考察】

 インジェクションにしろキャブレータにしろ,スムーズな吹け上がりはその状態に応じた最適な空燃比によります.

したがって,その調整をすることが問題解決のカギになりますが,

重要なのは,吹け上がりが悪い原因が燃料に依存するかどうかという見極め,

切り分けがなされているかどうかということです.

エンジンの吹け上がりが悪いと,何でもかんでもキャブレータのせいにしてしまう風潮がありますが,

本当にキャブレータが悪いのかどうかは,それ以外の重要な要素,

すなわち良い圧縮と良い火花が確保された時点で,少なくとも消去法として初めて言えるのです.

ですからまずは良い圧縮と良い火花を確認することが大切であり,

特に故障していた場合に一番修理費用のかかるエンジン,

つまり良い圧縮があるかどうか確実におさえなければなりません.

エンジンがダメであれば,よしんば100回キャブを分解しても症状は直りません.

例えるのなら,実際には食中毒の下痢でお腹が痛いと言う人に,

問診もせずにいきなり開腹して心臓移植手術をしている様なものです.

それを避けるためにも,素性が分からない車両はまずエンジンの圧縮圧力を測定しておく必要があるのです.

メガスピードにてキャブレータオーバーホールを承る条件として,

エンジンの圧縮圧力の測定を必須としている理由はここにあります.

また古い車両ではイグナイタやCDIが故障していて適正な点火時期等が確保されていない場合も少なくありません.

したがって,なぜ吹け上がりが悪いのかを包括的に診断する必要があるのです.


 今回の事例では各部点検測定の結果,空燃比の狂いがスムーズな吹け上がりを妨げていると判断し,

セッティングを見直すとともに各部の不具合も同時に修理しました.

やはりバイクは乗って楽しむものですし,その最低限の条件として挙げるのであれば,

エンジンのスムーズな吹け上がりは必須です.

そのためにも,正確な空燃比の調整が必要であり,車両に応じた対応が求められるのです.





※1 フロートチャンバ取り付けスクリュの締め付けトルク不足によるガソリン漏れについて






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