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事例:D-29

CDIの故障におけるプラグのかぶりとエンジン停止について


【整備車両】

 RG500EW-2W (HM31A) RG500Γ(ガンマ) 2型  年式:1986年  参考走行距離:約14,900km


【不具合の状態】

 走行中に発進が難しくなる程パワーがなくなり,最終的にアイドリング中にエンジンが止まりました.


【点検結果】

 この車両はお客様のご依頼により,走行中に発進が難しくなる程パワーがなくなり,

最終的にアイドリング中にエンジンが停止したということで,メガスピードにて点検整備を実施したものです.

まず焼き付きが発生していないかを確認する為にエンジンの圧縮圧力測定等を実施し,

燃料系統にも異常がないことを確認して,最終的に点火系統の不具合であると判断しました.



図1.1 不具合の発生しているスパークプラグ

 図1.1は取り付外したスパークプラグの様子です.

写真左から1番シリンダ,2番,3番,4番となりますが,

2番と3番が著しくガソリンがかぶっており,正しく燃焼していないことが推測されます.

これはエンジンが止まる直前に排気温度を確認したところ,2番と3番が大幅に低かったことと一致し整合性がとれます.

逆に1番と4番は乾燥して焼け切れている為,走行中に2番か3番のプラグがかぶり,

いわゆる3気筒で発進が困難になりパワーもなくなった状態に陥り,

それでも何とか走っていたものの,最終的にもう一つがかぶって実働が2気筒になり,

エンジンが停止したものであると推測することができます.

これは残された1番と4番の位相が同じことから,いわゆる片肺の状態になり,

極めて不安定な状態がエンジン停止に至らしめたと考えて問題ないといえます.

また焼け切れている1番と4番はともにBR7ESであり,かぶっていた2番と3番はBR9ESであることから,

確かに冷え型のプラグがかぶっているという結果になりますが,

実際には性能を発揮しているエンジンにキャブレータが正しく調整されていれば,

かぶりやすいとされる2サイクルエンジンでも番手を1つ冷え型にしたところで煤が増えるだけであり,

びしょ濡れになって止まることはありません.



 イグニションコイルは1-2と3-4で共通している為,かぶっているプラグとの組み合わせはバラバラであり,

その場合にコイルとハイテンションコード及びプラグキャップ等のすべてが正常であることから,

CDIより下流の点火系統に異常はないと判断することができます.

 またピックアップコイルにも異常がないことを確認した為,

消去法的にCDIが異常であると推定せざるを得ない状況でした.

これは以前にプラグに火が飛ばなかったことが数回発生していたことも,

十分に加味していることを付け加えておかなければなりません.



図1.2 不具合を発生させている可能性が否定できないCDI

 図1.2は車体から取り外したCDIの様子です.

不具合を発生させている可能性は排除できないものの,

各端子の抵抗測定を行うと,すべて整備書の基準値以内に収まる為,一概には故障と判断することはできません.

しかしその基準値がファジーである為,実際にはその範囲内に収まっていても故障している例が少なくなく,

今回の事例ではその他の可能性をすべて消去した為,結果的にCDIの異常を疑いました.


【整備内容】

 テスタでの測定結果は規定値と比較して良好であるといえますが,

CDIはブラックボックスであり中身の状態が確認できない為,その他の点火系統における確認できた部位と比較した場合,

消去法的に不具合を内在している可能性が否定できないことから,CDIを交換することから整備を実施しました.



図2.1 正常とされるCDI

 図2.1は別の実働車両から取り外されたCDIを当該車両と交換した様子です.

すでに絶版であることから,実働車から取り外された正常と判断されるCDIを使用しました.


 交換後にプラグも合わせてBR8ESで統一し,エンジン始動からアイドリング,加速,高速走行まで,

すべての状況において優れたいかにもRG500Γらしい走りを楽しむことができました.

つまり結果論からいえばCDIの故障が原因であった可能性が否定できません.



図2.2 試運転後に取り外されたスパークプラグ

 図2.2は高速を含めて75km程試運転してから取り外したプラグの様子です.

すべて均一に正常に焼けているのが確認できます.

つまり,プラグの番手による差異の為にかぶりが発生したのではないかという疑念を払拭することができました.

なぜなら,例えば4番シリンダについていてば,7番で煤だらけだったにもかかわらず,

相対的にそれより冷え型の8番に交換しても正常に焼けているからです.

また2番と3番についていえば,番手を1つ焼け型にしただけでは,

びしょびしょにかぶる状態が一気に改善する程影響を及ぼす可能性が低いといえます.

以上の結果から,今回の不具合の原因はCDIの故障と推測されます.


【考察】

 プラグがいきなりびしょびしょにかぶる現象は,点火時期に異常が発生している場合が少なくありません.

確かに燃料を濃くし過ぎればかぶりを発生させる確率は高くなりますが,常識的な範囲では,

プラグは自己清浄作用により何とか焼け切ろうとします.

しかし点火時期が滅茶苦茶になると,供給されたガソリンが正しく燃焼されない為,

ガソリンを撒いたようにプラグの電極がびしょびしょになります.

特にRG250Γ (GJ21A) におけるCDIの異常の事例
※1では,

新品に交換した瞬間に,数十メートルの走行でびしょびしょになる症状が発生していました.

それ程点火時期異常はプラグに対してかぶりという不具合を発生させる原因になります.

そしてCDIの故障によりプラグがびしょびしょにかぶるという現象が,

当社の修理事例数で考えても,製造後20年程度経過している車両に確実に増えてきていると断言することができます.


 今回の事例では各部の点検からCDIの不具合を疑い,交換して症状が改善されました.

しかしすでに絶版であった為,交換したものが中古であるのが唯一完全ではない点です.

なぜならその中古部品も車両から取り外されたとすれば,数十年は経過していることから,

あとどのくらい部品としての寿命が見込めるかが不明である為,

今後の課題としては特に電装系の絶版部品への対策が必要であるといえます.





※1 “CDIの故障における点火時期異常によるプラグのかぶりとエンジン停止について”






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