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事例:D‐27

CDIの故障における点火時期異常によるプラグのかぶりとエンジン停止について


【整備車両】

 RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) Ⅰ型  推定年式:1983年  参考走行距離:約20,400km


【不具合の状態】

 走行中に排気チャンバがパンパン鳴り,エンジンの力がなくなり,停止してしまう状態でした.


【点検結果】

 この車両はお客様のご依頼により,プラグがかぶるということで実際に症状の共有や確認の為に試運転を行ったところ,

走行直後から吹け上がりに引っかかる回転域が存在することを確認しました.

さらに5km程走行すると,スロットル全閉の状態で不完全燃焼によりパンパンとチャンバーから音がする様になり,

吹け上がりが一層不安定かつ不完全になりました.

その後出発点から22km程の地点でエンジンが停止した為,

プラグを取り外すと,左右とも完全にガソリンでびしょびしょに濡れていました.

両側ともプラグを交換し,再びエンジンが始動できたものの,2kmも走行しないうちに燃焼がめちゃくちゃになり,

スロットルに関係なくタコメータが勝手に上下する状態に陥りました.

そしてエンジン回転の制御をスロットル操作で維持できず,エンジンが停止しました.



図1.1 大量のガソリンが被っているプラグ電極部

 図1.1は新品に交換して2km程度でかぶったプラグの様子です.

全体的にガソリンが付着してびしょびしょになっていることから,燃焼状態は極めて不完全であったと推測されます.

キャブレータはすでに当社で完全にオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)を実施していたことや,

エンジンの圧縮圧力が左右とも約1,000kPa程度あり非常に良好であること,

そしてエンジンの回転が極めて不安定であり,

通常のスロットル操作では絶対に再現できないレベルの,

めちゃくちゃなタコメータの針の動きすなわちエンジン回転であったことから,

不完全燃焼によるプラグのかぶりの原因は点火時期の異常であると判断しました.


 J201型エンジンの場合,点火機構は大きくイグニションコイル廻り,ピックアップコイル廻り,CDIの3つに分類できます.

このうちイグニションコイルは一次側も二次側も抵抗値は規定値内であり,

ハイテンションコードは問題なく,プラグキャップも新品に交換したばかりであることから,異常なしと判断しました.

次にフライホイールを取り外し,点火信号発生部位周辺を点検しましたが,特に異常がないことを確認し,

CDI本体が故障している可能性があると判断しました.

今回の事例の症状と全く同じ症状で,

点火信号の異常でエンジン回転が勝手にめちゃくちゃになるケース
※1 がありますが,

今回の事例ではその時と症状はまったく同じでも,ピックアップコイル等は正常である為,

点火信号の受信体であるCDI本体に原因を絞りました.

いづれにしても,点火系統に異常があることは疑いの余地はありません.



図1.2 CDIユニット端子部

 図2.2は取り外したCDIユニットの端子部の様子です.

J201型エンジンは2サイクルに多く見られる例と同じく,CDI (Capacitor discharge ignition) を使用しています.

図の各端子はそれぞれ,コンデンサ充電用エキサイタ,点火信号用パルサ,点火用イグニションコイル,アースであり,

各々を測定した結果,テスタ端子+側にパルサを接続した時,テスタ端子-側にアースで約3,9Ω,

エキサイタでopen,1MΩ,イグニションコイルで12,8KΩとほぼ規定値であることが確認できました.

同様にテスタ端子+側にアース,エキサイタ,イグニションコイルを接続した状態でそれぞれ-側に,

パルサ,アース,エキサイタ,イグニションコイルとすべての測定においてほぼ規定値通りでした.


【整備内容】

 テスタでの測定結果は規定値と比較して良好であるといえますが,

CDIはブラックボックスであり中身の状態が確認できない為,その他の点火系統における確認できた部位と比較した場合,

消去法的に不具合を内在している可能性が否定できないことから,CDIを交換することから整備を実施しました.



図2.1 正常なCDI及びレギュレータ

 図2.1は別の実働車両からCDIを取り外して当該車両と交換した様子です.

レギュレータは新品の部品供給があった為,メガスピードにて前回の整備時にすでに交換しておいたものです.

半導体電子部品は突然壊れる為(少なくとも外部からは確認できない為,症状としては突然露見した形になる場合が多い),

少なくとも発売後20年以上経過した車両であれば,迷わず新品に交換すべき箇所であるといえます.



図2.2 理想的な燃焼を示したスパークプラグ

 図.2.2はCDI交換後,新品のプラグを装着して試運転を行い,取り外した様子です.

接地電極や碍子を含めて完全に焼けていてかぶりの発生する要素は皆無でした.

また焼け色が理想的なことから燃焼状態も極めて良好であると判断することができます.

坂や高速道路を含めて3回に分け色々な道を合計約70km程走行した結果,

力強く加速し,吹け上がりも良好であり,アイドリングも安定しており,

スロットル全閉時に発生していた不完全燃焼によるチャンバでの爆発もなくなり,

正常に走行できることを確認して整備を完了しました.


【考察】

 今回の事例では排気チャンバがスロットル全閉の状態で特に著しくパンパン鳴ったり,

エンジン回転が滅茶苦茶になったりした原因は,CDIの故障による点火時期異常が発生した結果であり,

不完全燃焼に陥りプラグの被りが生じてエンジン停止に至ったものであると結論付けられます.

途中でいくら空ぶかしして高回転にしてからクラッチをつないでも発進することができない程出力低下が発生したのは,

点火時期の異常による不完全燃焼の結果,軸トルクが極端に低下していた為であると考えられます.

またその不完全燃焼により,供給されるガソリンを燃焼し切ることができずに,燃焼室に溜まったガソリンがプラグに付着し,

被りの状態を発生させて,中心電極からの火花が碍子にリークして点火不良を引き起こしていたといえます.


 今回の事例ではCDIの端子すべてを測定した結果,規定値とほぼ同値であり,

その結果からは全く問題がないと考えることができます.

しかし実際にはCDIを交換することにより完全に症状が改善されたことから,結果的にCDIの故障と診断せざるを得ません.

すなわちこのことは,半導体を使用した電子部品は低電圧における測定では正確な判定が行えないことを示しており,

メーカーのサービスマニュアル・整備書にもテスタでのチェックが良好でも判断できない故障があります,

と明記している通り,完全な故障診断を行うことは非常に難しいといえ,

最終的には現物で症状が改善されたかを判断しなければならない場合が少なくありません.


 半導体は熱に弱く,使用に伴い必ず劣化し破損します.

やはり発売から20年以上経過した車両であれば,半導体電子部品は可能な限り新品に交換しておくことが望ましいといえ,

故障する頃にはメーカー絶版になっているケースが多い為,

そうなる前の予防的な整備が非常に重要となる部位であるといえます.






※1 “クランクシャフトベアリングの破損に起因する点火不良について”






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