事例:E‐29
クランクシャフトベアリングの破損に起因する点火不良について |
【整備車両】
NSR250RJ (MC18) 推定年式:1988年 参考走行距離:27,500km |
【不具合の症状】
走行中にタコメーターの表示がめちゃくちゃになり、エンジンが停止しました。
エンジンは停止しても再度始動可能でしたが、すぐにエンジン回転にバラつきが出て、
スロットルを開けていないとアイドリングできない状態でした。 |
【点検結果】
エンジンが停止してもすぐにキックによる始動が可能だったので、
走行中にエンジンが停止したものの、焼き付きの可能性は低いと判断しました。
回転のバラつきは意図的に点火時期をめちゃくちゃにしたくらいおかしな状態でした。
それと同じようにタコメーターの動きもめちゃくちゃでしたが、必ずしもエンジン音と同調していない場合がありました。
これらのことから、不具合の原因はPGM-CDIの故障か点火系統の異常であると推測しました。
まずPGMを点検動作確認済のものと交換して試運転したところ、まったく症状が変わりませんでした。
次に、点火時期を決めているフライホイールロータとピックアップコイルを点検しました。
すると、ロータに亀裂が入っているのを確認できました。
図1.1 ロータの側面とラジアル面の間に発生した亀裂 |
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図1.1は破損したロータを左右から撮影したものです。
亀裂はほぼ全周にわたって発生していて、手でロータを揺らすとグラグラし、
亀裂の裂けが増大し、グニャグニャするのが確認できました。
手の力でこれだけロータが歪むので、
エンジンをかけたときの遠心力によるロータの偏芯はかなり大きなものであると推測できます。
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