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海水によるエキゾーストの腐蝕について


【整備エンジン】

BF5A(BADS)BF5A2  船外機  推定年式:2002年  エンジン稼働時間:不明


【不具合の状態】

エキゾーストの壁厚がほとんどなくなるくらい薄くなっていました。


【点検結果】

この船外機はエンジンがオーバーヒート気味であるということでメガスピードにて整備のご依頼を承ったものですが、

オーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)が必要であると判断し、

エンジンを分解した結果、エキゾーストの壁厚がほとんどないくらいに薄くなっていました。

オイルパンについてはすでに肉がなくなり穴があいていました。




図1、腐蝕により肉の減ってしまった壁

図1は腐蝕により肉の減ってしまったエキゾーストの様子です。

全体的に壁肉が痩せてしまい形状もそれぞれの腐食の進行によりいびつになっています。

そして黄色い四角で囲んだAの部分に至っては、部分的に外部とつながってしまっていることが分かります。




図2、腐蝕して外側とつながってしまったエキゾースト

図2は図1の黄色い四角Aの部分を拡大した様子です。

黄色い四角Bの部分がロワユニットとの接合面より低くなっている為外部と接続してしまっていることが分かります。

これは水漏れや排気漏れに直接結び付く不具合の原因になります。

周囲に目立つ傷や応力等のかかった痕跡が見られないことや、エキゾーストが全体的に痩せていることから、

海水によりアルミ合金が腐蝕した結果、肉厚が薄くなり外部とつながってしまったものであると判断しました。


【整備内容】

取り外したエキゾーストはすでに修復が不可能レベルに達していると判断できるほど肉が腐蝕により痩せていることや、

修復にかかる時間や費用を考え、新品の方が低コストで品質も間違いないと判断して新品を取り寄せました。



図3、新品のエキゾースト

図3は新品のエキゾーストの内側の様子です。

腐蝕して痩せてしまった図1のものと比べると全体的に均一な肉厚があり、

且つ直線部も曲線部も人為的に設計された美しい形状になっています。

逆に見ればこの新品の状態が海水により図1の状態まで肉を減らしてしまったということです。

それ程アルミニウム合金に対する海水の脅威を考えなければなりません。




図4、パワーユニットに取り付けられた新品のエキゾースト

図4はパワーユニットに取り付けられた新品のエキゾーストの様子です。

これによりロワユニットとの接合面に対しガスケットを十分に圧縮できる面積の肉壁を確保でき、

取り付け、試運転まで良好な結果を得ることができました。


【考察】

このエンジンはオーバーヒート気味であるということで整備を承ったものですが、

エンジンを分解した結果、冷却通路が塩でほとんど塞がっている箇所が数か所ありました。

つまり、冷却通路に水が流れにくくなった結果、エンジンがオーバーヒート気味になったと考えられます。

このことから冷却通路が塩で詰まってしまう程海水で使用したにもかかわらず、

適切な使用後の処置を行っていなかったことが推測できます。

すなわち海水が内部に溜まっている状態で保管したことが、

エキゾーストの肉をここまで減らしてしまった原因の一つになりうるということです。

オイルパンも同様に肉を減らし、穴があいていたので、かなりの海水腐食があったと推測できます。



エンジン内部の残留海水は塩を形成して冷却通路を狭くしエンジンをオーバーヒート気味にさせるだけでなく、

その周囲のアルミ合金を腐蝕していきます。

やはりエンジン内部特に冷却通路周辺をクリーンな状態にしておく為にも、

船外機を海水で使用した場合は可能な限り水の通り道やその周辺を真水で洗浄しておくことが求められます。





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