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事例:E-271

オイルシールの劣化によるミッションカウンタシャフトからのオイル漏れについて

【整備車両】 
 LS650 (NP41A) Savage サベージ650  年式:1987年  参考走行距離:約33,000km
【不具合の状態】 
 エンジンのフロントスプロケットからオイル漏れが発生していました.
【点検結果】 
 この車両はエンジン下部からのオイル漏れが著しい為,お客様のご依頼によりメガスピードにてエンジンオーバーホールを承ったものです.ここではその際に修理したドライブスプロケット周囲からのオイル漏れについて記載します.

図1.1 オイル漏れの発生しているミッションカウンタシャフトオイルシール部
 図1.1 はフロントドライブスプロケットを取り外し,ミッションカウンタシャフトのオイル漏れの状態を確認した様子です.シャフトのカラー取り付け部とオイルシールの隙間からエンジンオイルが漏れ出していることが分かります.

図1.2 摩耗しているオイルシールリップの接触部
 図1.2 はエンジンを分解して取り外したトランスミッションカウンタシャフトの様子です.カラーはエンジン外側から取り付けられますが,位置が分かりやすいようにカウンタシャフト単体にして撮影しました.Aの赤矢印で示した部位がリップ内側の接触部,Bの赤矢印で示した部位がリップ外側の接触部です.回転するものを密封するのは容易ではありません.わずかな接触圧力でも30,000kmも走行すれば図のように金属側も筋が入るほど摩耗します.この状態ではいくらオイルシールを新品にしても,金属部との密封性能が十分でない為,オイル漏れが再発する可能性が否定できません.


【整備内容】
 オイルシールを新品にすると同時に接触部の金属カラーも新品に交換しました.

図2.1 修正研磨したカウンタシャフトカラー取り付け部
 図2.1 はミッションカウンタシャフトのカラー取り付け部を修正研磨した様子です.この部位はOリングで内側からオイルが漏れない様になっていますが,わずかに傷が確認できたため,修正研磨して密封性能を強化しました.

図2.2 新品のOリングおよびカラー
 図2.2 はカウンタシャフトに取り付ける新品のOリングとカラーの様子です.カウンタシャフトとカラーの隙間をOリングが密封し,カラーとハウジングの隙間はオイルシールが密封します.

図2.3 新品のオイルシールの取り付けられたカウンタシャフトカラー
 図2.3 は新品のカラーを新品のOリングを介してカウンタシャフトに取り付け,そこに新品のオイルシールを取り付けた様子です.これによりカラー内側からも外側からもオイル漏れが解消されます.

図2.4 漏れの解消したミッションカウンタシャフト
 図2.4 は修理後に試運転を300km程実施してから撮影したミッションカウンタシャフトの様子です.オイル漏れが完全に解消されたことを確認して整備を完了しました.


【考察】 
 オイル漏れの発生する部位として,シャフト端部は良くある事例になりますが,それは回転するものを密封するということは非常に難しいものであることを示しています.回転体も金属であれ必ず摩耗して段付きが発生します.もちろんオイルシールを交換する必要がありますが,やはりリップの接触部である金属側も新品に交換しなければ完全とは言えません.

 今回の事例では幸いカラーも新品にできたため,完全に漏れを止めることができました.しかし古い車両であれば部品が絶版であるという壁に当たる場合もあります.その場合もあの手この手で対策することになりますが,やはり部品が出る場合は,シール側も接触部側もともに新品にすることが最善であるといえます.

 カラーの摩耗は30,000km程度走行した結果であり,オイルシールの密封性能低下は発売から数十年経過していることによる経年劣化であると言えます.つまり時間と距離の両方が絡み合った現象であり,オイル漏れとは乗らなくても発生するし,乗っても発生するという現象であることを理解しておく必要があります.







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