| アナログタコメータ表示のわずかな狂いとアイドリングの低過ぎによる回転のバラつきについて |
【不具合の状態】
アイドリングが冷間時から暖機後まで水温に関係なく不安定になる場合がありました． |
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【点検結果】
この車両はアイドリングが不安定になるということでメガスピードにて点検整備を承ったものです．お客様に自走してお越しいただいた為，その場で暖機時の不具合を共有することができました． |
| 図1.1 は車両をお預かりしてから改めて症状を確かめる為にアイドリング状態を点検している様子です．タコメータの針は目視で約1,300 rpm付近を指しています．すでにお客様と状態を共有していましたが，再度確認すると，やはりアイドリングが不安定な状態が再現されました． |
| 図1.2 は図1.1 の状態において実際のエンジン回転数をデジタルタコメータで確かめた様子です．すると1,120 rpm付近で推移していることが分かりました．このことから少なくともこの車両のアナログ表示のタコメータは実際より若干回転数を高く表示している可能性があります． |
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【整備内容】
アイドリングの不安定な状況下での各気筒の吸入負圧の状態を確認することから整備を開始しました． |
| 図2.1 は負圧ホースを追加し，センサをキャンセルせず，本来の状態で負圧測定できるように手配した様子です．サービスマニュアルではセンサからホースを外しフェイルセーフで負圧の測定を行うように記載されていますが，それでは実際の状態と差異が生じます．したがって本来の状態で測定できるよう負圧ホースの分岐を増やし，センサーへの接続はカットせずにエンジンをかけられるようにしました． |
| 図2.2 は各気筒の負圧を測定している様子です．1番と4番がほぼ同値，2番と3番がほぼ同値で，それぞれはわずかにずれていました．しかしこの程度のズレはアイドリングを不安定にさせるほどではないと言えます． |
| 図2.3 はスタータ―バルブを調整することで各気筒の負圧を同調させている様子です． |
| 図2.4 は各気筒の同調を調整した様子です．メガスピードではバイク用の目の粗いゲージを使用せず，工業用の細かいゲージを用いることにより正確に同調調整することが可能です．今回は-0.026MPa程度で同調調整されました．そして最終的にデジタルタコメータを使用してマニュアル値の約1,400rpm付近にアイドリングを調整しました．その結果アイドリングのバラつきや不安定さは解消されました． |
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【考察】
マルチシリンダの場合，各気筒の負圧に差が出るとアイドリングがバラついたり不安定になったりします．もちろん各気筒の負圧が同調されればスムーズなエンジン回転になりますが，あまりにも気筒間差があれば同調を調整し切れません．またアイドリングが安定する最低回転速度を下回れば当然不安定になり，エンストの原因になります．今回の事例では確かに同調がずれていましたが，それはせいぜい0.002MPa程度の差であり，アイドリングを不安定にさせるほどのものではありません．入庫時に測定した不安定なエンジン回転速度は1,120rpm程度でしたが，マニュアル値は1,400rpmが指定です．したがって1,400rpmの指定を280rpmも下回っていればアイドリングが不安定になっても何らおかしなことではりません．
今回の事例では確かに同調もずれていましたが，それはわずかであり，アイドリングのバラつきの大きな原因はアイドリングが低すぎることによると結論付けられます．そしてこの事例から学ぶべきことは，アナログ表示のタコメータはあくまで参考に過ぎないということです．回転信号は電気的に正確でも，それを機械的な針の動きに置き換える段階でズレが発生する可能性があります．また表示板と指針を見る角度によってもわずかなズレが発生します．お客様は車載のアナログ表示のタコメータを見てアイドリング時のエンジン回転速度を調整されていましたが，実際にはメーター表示の誤差により低すぎる状態でした．したがって，アイドリングはデジタルタコメータで一度正確に調整しておくことが望ましいと言え，その際に車載のタコメータと測定器具のデジタルタコメータでどの程度の差があるのか把握しておくことが大切です． |
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