事例:E-196
サーモスタットリップ部の潰れと水漏れの危険性について |
【整備車両】
RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型 推定年式:1983年 参考実走行距離:約9,200km |
【不具合の状態】
サーモスタットのリップ部がねじれていました. |
【点検結果】
この車両はお客様のご依頼により,エンジンの吹け上がりに引っ掛かりのある回転数が存在する ※1 ということで,
メガスピードにて修理を承ったものです.
今回の事例では,水廻りの点検一式を行っていた際に取り外したサーモスタットについて記載します.
図1.1はサーモスタットを交換する為にカバーを取り外した様子です.
赤い四角で囲んだサーモスタットゴム部に歪みが見られました.
この状態では確実にクーラント(冷却水)を密封することができず,
歪んだすき間から水漏れが発生する原因になり兼ねません.
図1.2は取り外したサーモスタットリップ部の様子です.
リップ部が噛み込んで潰れてしまった印象を受けます.
通常はこの様にリップ部が損傷することはないといえ,
サーモスタットの取り付け作業が不完全でこの様にゴム部が損傷していたと推測されます. |
【整備内容】
発売が1983年ということを考えればサーモスタットは交換時期であると判断した為,
どちらにしても新品に交換する予定だったこともあり,当初の段取り通りに整備を進めました.
図2.1は新品のサーモスタットを上から見た様子です.
新品はゴムに弾力があり柔軟性に富んでいます.
この状態であれば,冷却水を確実に密封する性能が期待できます.
図2.2は新品のサーモスタットを下側から見た様子です.
金属部やスプリングも新品で滑らかな動きが期待できます.
図2.3 エンジンに取り付けられた新品のサーモスタット |
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図2.3は新品のサーモスタットを点検洗浄の完了した冷却水通路に設置した様子です.
最終的に試運転を行い,水温に異常がないことを確認して整備を完了しました. |
【考察】
サーモスタットをシールするゴムはサーモスタット生産時に組み付けられている,すなわちASSYになっています.
そして一旦組み付けたサーモスタットは外観から直接確認することは難しい為,
水漏れが発生しても気づきづらい位置にあります.
したがって,組み付け時にシールゴム特にリップ部がめくれたり潰れたりしないようにしなければなりません.
この事例ではサーモスタットとアッパカバーとの接続部ゴムが潰れて変形していました.
冷却水の圧力がかかる部位ではない為,組み付け時にめくれた可能性が否定できませんが,
この様なケースはあまり見られないことから,何か特別な経緯があったのかもしれません.
いづれにしろ昔の整備状態が分からないのが中古車ですから,
やはり古い車両を乗り出す場合は総合的に点検整備しておくことが求められると言えます.
※1 吹け上がりの引っ掛かりと空燃比の狂いについて
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