中心電極および接地電極の両側の摩耗したスパークプラグについて |
【整備車両】
XZ50 Type D9 (AC18) エイプ・50 Type D Ape (50) 推定年式:2008年 参考走行距離:約4,400km |
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【点検結果】
この車両は個人売買の現状販売で購入されたものを,メガスピードにて点検整備を実施したものです.今回の事例では消耗していたスパークプラグについて記載します. |
図1.1はエンジンの基本要素であるスパークプラグの様子です.取り外して点検する前に,素性の分からない中古車両は慎重に状況を見極める必要があります.
外観目視でもすでに錆が発生していて光沢も失われていることが確認できます.これは雨天走行車両に多く見られますが,そうでない場合,経年により湿気等でこうなる場合があります.この車両は著しい錆の発生はないことから,雨天走行でなったのではなく,長年使用されたことによる錆であると推測されます. |
図1.2 砂利の挟まっているスパークプラグ座面付近 |
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図1.2はスパークプラグの座面付近の様子です.赤色の円で囲んだ部位に砂利が挟まっていることが分かります.もしスパークプラグを外す時にこの砂利がエンジン内部に落下すれば,バルブ廻りに悪影響を及ぼす可能性があります.更に万が一バルブとシートに挟まれば,オーバーホール(分解整備・精密検査)が必要になる為,スパークプラグの取り外しは周囲を清掃した上で慎重に行わなければなりません. |
図1.3は取り外したスパークプラグ (CR6HSA) の様子です.外観の錆からして内部の状態は期待できませんでしたが,予想を裏切ることなく,電極が消耗していました. |
図1.4は中心電極と設置電極をそれぞれ斜め上と水平方向から見た様子です.中心電極も接地電極も,ともに著しく消耗して痩せてしまっているのが分かります.これによりプラグギャップが極端に広がってしまい,理想的な点火とはかけ離れた状態に陥っていると判断することができます. |
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【整備内容】
スパークプラグを同熱価の新品に交換しました. |
図2.1 新品のスパークプラグ(左)と消耗したプラグの電極部の比較 |
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図2.1は参考までに分かりやすいように新品のスパークプラグ(左)と取り外した古いスパークプラグを並べて比較した様子です.こうしてみると,古いプラグは中心電極が接地電極支持部方向で大きく消耗していることが分かります.また接地電極も大きく摩耗していることから,その間の空間すなわちプラグギャップも異常に広がってしまっていることが見てとれます. |
図2.2 エンジンに取り付けられた新品のスパークプラグ |
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図2.2は新品のスパークプラグ (CR6HSA) をエンジンに正確に取り付けた様子です.座面周辺はすでに洗浄されていることから,取り付け時に内部への異物の落下を心配することはありません.
整備を完了して実際に試運転してみれば,エンジンのかかりが良くなっただけでなく,低回転の粘りが増して踏ん張りが利くようになったことが確認できました.この結果はFIと言えども適切な点火を要求することの当然さを再認識する機会になりました. |
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【考察】
この車両は入庫時の段階で普通に走行することができました.しかし,フタを開けてみれば,なぜこれほどまでに電極が消耗しているのに普通に走行できるのか,という疑問がわきます.そしてそれは少なくともFI
(Fuel Injection) の性能によるところが大きいのではないかという結論に至ります.多少点火状態が悪くても,ECUで燃焼状況を判断して適切な燃料を噴射していれば,そうエンストするものではありません.これがキャブレータ仕様の古い車両であれば,エンジンのかかりが悪い,吹け上がりが悪い,吹かさないと発進できない,といった症状が多かれ少なかれ発生していたはずです.
この車両は排気量49ccの第一種原動機付自転車いわゆる原付です.それがO2センサを備えて電子制御されるようになったことは,値段を考えれば非常に進歩したと評価する意見に賛同するのが私の立ち位置です.高価だったインジェクションが今や原付にまで装備されるようになったのは,やはり評価すべきではないかと思います.
この事例ではスパークプラグの電極が極度に消耗していました.メーター表示の走行距離4,400km程度ということを目安とすることが許されるのであれば,車両全体の状態や,プラグの摩耗の具合から判断して,おそらく取り外した消耗したプラグは新車当時のものであると推測することができます.FI仕様になりメンテナンスフリー化が進むのは非常に喜ばしいことではありますが,やはり制御は変わっても,減るものは減るのです.金属だって使用に比例してやがてはなくなっていくのです.したがって,定期的な点検整備は最低限必要であり,それがより一層インジェクションライフを充実したものへと導くキーポイントであることを付け加えておきます. |
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