赤信号で車両停止時に1速からニュートラルに全く入らない症状の解決について |
【整備車両】
RG500EW-2W (HM31A) RG500Γ(ガンマ) 年式:1986 参考走行距離: 23,000 km |
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【不具合の状態】
赤信号で車両を停止した時などに,1速のまま停止した場合,全くニュートラルに入らない状態でした. |
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【点検結果】
この車両はギヤが抜けないということでメガスピードにて整備を承ったものです.具体的にはエンジンをかけた状態で,例えば赤信号などでギヤが1速に入ったままクラッチを握って停止した場合,車両が完全に止まるとギヤがシフトペダルの操作で抜けなくなり,ニュートラルに入らない状態でした.つまり信号が赤の時はずっとクラッチレバーを握っていなければならないということです.クラッチレバーを握りっ放しでいるのは左手や首,腰にとって非常につらいく,楽しいはずの500Γも苦痛になり兼ねません.
お客様は機械に理解のある方で,今回は理論的に機械的に進めてほしいというご要望のもと,それにかかる時間や労力を見積もり,可能な限りご支援をいただきました.それに応えるべく徹底的に対象範囲の部品の測定,計測,研究を重ねました. |
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【整備内容】
関連各部を見直し,適切な対策を取りました. |
図2.1 適切な対策のとられたエンジン (※画像はモザイク加工処理されています) |
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図2.1は適切な対策のとられたエンジン内部の様子です.症状から論理的・機械的な考察を行い,各部品を測定,分析しそこから導かれた方針を実践しました.通常整備事例では研究結果を公開しますが,今回の事例は膨大な研究時間に対するお客様の覇気・深いご理解・ご支援の賜物なので,極秘になります.もちろん同様な症状で当社に修理のご依頼があれば,企業秘密こそ開示できませんが,惜しみなくその研究結果を利用して対策させていただくことが可能です. |
図2.2は改善対策の施されたエンジンの様子です.この内部に研究結果から得られたメカニズムが組み込まれています.実際に試運転し,
➀ エンジン始動直後
② 水温70℃~90℃の各段階
③ 高速道路
④ 渋滞
⑤ エンジン停止,再始動後
⑥ クラッチ握りっ放しで1速→N(ニュートラル)→1→N→1→Nの繰り返し
等,様々な条件下で,全く問題なく極めて軽くシフトすることができることを確認しました.これは入庫時の500Γとはまったくもって別物と言えるほど,症状が改善され,良い結果が得られた格好の事例となりました.私個人の感想としては「こんなに変化するものなのか!!」といったところです.1→Nのシフトが軽くなったというよりも,むしろわずかな意図的外力により自然にニュートラルに吸い込まれる感じがする程です. |
図2.3はギヤをニュートラルに入れ,ニュートラルランプが点灯している様子です.対策前は全く入らなかったニュートラルがスムーズに入るようになり,憎らしかったニュートラルランプに達成感と親近感がわきました.
今回の修理では構造を物理的・機械的に変化させたことから,よほどのことが無い限り状態は維持し続けることが見込めます.その裏付けの為,最終確認として翌日もう一度20km程一般道を試運転しました.その結果,完全に前日と同じ良好な状態が再現されることを確認し,整備を完了しました. |
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【考察】
今回の事例ではギヤがニュートラルに入らないという症状を完全に改善することができました.もはやニュートラルに入らない500Γなど何の価値もない!と思わせる改善ぶりでした.シフトも全域で滑らかになり,クラッチの操作感も良くなりました.これなら楽しく乗ることができます.
世の中ETCが当たり前になってきましたが,地方の有料道路などはいまだに現金払い,あるいは回数券払いです.特にバイクはツーリングで地方の有料道路を通るという機会があることからも,まだまだ料金所での支払い動作は必須です.そのためにもニュートラルは常にスムーズに入らなければなりません.
今回の事例ではお客様のご支援のもと,膨大な研究の結果,対策・組み立て後に1発で望み通りの結果を得ることに成功しました.しかし実際には物事はうまくいかない方が多く,行く手には様々な問題が待ち受けています.そして例えうまくいかなくても,うまくいくまで何度も研究してやり直すという意気込みで取り組む必要があります.プロフェッショナルですから,引き受けたからにはどんな手を使っても必ず結果を出さなければなりません.例え夜眠れなくなっても,食欲がなくなっても.「できませんでした」 では許されないのです.
どうやら今夜はゆっくりできそうです. |
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