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インシュレータの亀裂、部分的ちぎれによる二次空気の吸い込みの可能性と加速不良について


【整備車両】

R1-Z (3XC) 3XC3 1993年式  走行距離:15,500km


【不具合の症状】

加速時にエンジン回転の上がり途中で引っ掛かりのある回転域がありました。


【点検結果】

外観からの目視でインシュレータに亀裂があることが分かっていたので、

インシュレータを取り外して点検したところ、全体的に劣化していて各部に亀裂が生じていました。


図1 、亀裂の入っているインシュレータ

図1は取り外したインシュレータの様子です。

黄色の楕円aとbはそれぞれお客様が車体の外側から手の入る範囲でコーキング補修された部分です。

車両に取り付けられている状態では内側まで確認できませんが、

取り外してみると亀裂は全体に発生していて、さらに黄色の楕円cの部分はマニホールドを連結する通路が割れていて、

大気が侵入していてもおかしくない状態でした。




図2、1番シリンダのインシュレータ外側

図2は1番シリンダのインシュレータ外観です。

黄色の四角A及びBは亀裂の入っている箇所です。




図3、1番シリンダインシュレータの内側

図3は1番シリンダのインシュレータ内側の様子です。

黄色の四角B'及びA'はそれぞれ図3の黄色の四角AとBにあたり、

ともに内側まで亀裂が進行していることを示しています。

この状態では亀裂が周辺の弾性により密封されていましたが、

目視で確認できないレベルのすき間からわずかに大気を吸い込んでいる可能性も否定できません。


【整備内容】

亀裂が全体的に広がっていることや2番シリンダのインシュレータの連結部分が

半分近く千切れてしまっていることを考慮し新品に交換しました。


図4、マニホールドに組み付けられた新品のインシュレータ

図4は新品のインシュレータをマニホールドに組み付けた様子です。

鉄製のホースバンドも合わせて新品に交換し、ゴムと連結ジョイントの保持力の回復を図りました。


【考察】

この事例ではインシュレータの整備とキャブレータの分解整備を同時に行ったので、

必ずしも加速時に引っ掛かる回転域が発生した原因がインシュレータであると特定することはできません。



インシュレータからの二次エアの吸い込みは、

スロットルバルブが全閉の状態でもアイドリングが下がらない原因になりますが、

高回転時におけるスロットルバルブからの空気の吸い込み量はアイドリング時とは比較にならないほど多くなるので、

インシュレータの亀裂からの二次エアの吸い込み割合は、

亀裂が変形しないものと仮定するとアイドリング時と比較して必然的に小さくなります。

スロットルバルブ全開時における二次エアの吸い込みによる空燃比の理論値からのずれが、

どの程度エンジン出力に影響するかを数値として考えるのは非常に困難ですが、

相対的にとらえると、亀裂が熱や吸入空気圧力の変化で変形しないものとすれば、

エンジンが高回転になる程その影響は少なくなるといえます。

この事例では内側まで達している亀裂は僅かでしたが、連結パイプがかなり千切れていたので、

そこからの二次エアの吸い込みはエンジン回転に同調してかなりの影響があった可能性は少なくありません。

エンジンの症状としては加速時に引っ掛かる回転域があったので、

二次エアの吸い込みが空燃比と排気バルブの動作による脈動の変化等に影響していたこともないとはいえません。

エンジン暖機後に受ける熱を考えると、ゴムが膨張した分亀裂が狭くなる可能性もあります。

その場合はやはり二次エアの吸い込みによる空燃比の変化の割合が変わってきます。

大気の吸い込みが冷間時と比較して暖機後が少なくなる様な場合、

エンジンが温まると調子が良くなるといった現象に現れてきます。



インシュレータ外側の亀裂はお客様が手の入る範囲で応急的にコーキングにより補修されていました。

しかし外側に亀裂がある場合はやはり内側にも存在すると考えて、

長期的に車両の使用を考えた場合は、インシュレータを取り外し全体的に点検しておく必要があります。



この事例では整備した時点で新品のインシュレータが入手可能であった為、

ゴムクリップと合わせて1番、2番とも新品に交換することができました。

しかし古い車両ではすでにインシュレータが絶版である車両も少なくありません。

その場合はコーキング等で対策することが求められますが、

ゴム製品は使用や経年にともない必ず劣化し、亀裂や損傷が起こります。

やはり新品が入手できる場合は、迷わず新品に交換しておいた方が良いといえます。





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