事例:E‐112
劣化・硬化した燃料ホースと燃料漏れの危険性について |
【整備車両】
GSX1300RY (GW71A) "HAYABUSA" 隼 (ハヤブサ) 年式:2000年 参考走行距離:約22,400km |
【不具合の状態】
燃料ホースが硬化していて,亀裂が発生していました. |
【点検結果】
この車両は走行距離が20,000kmを超えた為,エンジンのオーバーホールを実施したものです.
その際に燃料ホースに不具合が見つかった為,整備することになりました.
図1.1はガソリンを燃料タンクから燃料ポンプに供給するフィードホースと,
燃料ポンプから燃料タンクに戻されるリターンホースの様子です.
まずホースの擦れ防止スプリングが変色していることが分かります.
燃料ホース交換時に必ずしもスプリングが同時に交換されているというものではありませんが,
これは相応の期間燃料ホースが交換されなかった可能性を含んでいることを示唆しています.
またホースそのものが硬化している為,亀裂が発生しやすい状態に陥っていました.
この車両は2000年モデルですが,おそらく当時から使用されていたものであると推測することができます.
図1.2は状態を詳細に点検する為,擦れ防止スプリングを取り外したリターンホース様子です.
潰れている部分が確認できる他,クリップ取り付け部が荒れているのが分かります.
取り付け口から数ミリ亀裂が発生していて全体的にカチコチに硬化していました.
この状態ではホースが割れて燃料漏れが発生する可能性が高く危険な状態であるといえます.
またフィードホースも同様に亀裂が入っていて燃料漏れが懸念される状態に陥っていました. |
【整備内容】
燃料ホースの不具合は車両火災に直接結び付く為,劣化していた擦れ防止スプリングや,
広がってしまっているクリップを含めて,フィード側とリターン側を一式新品に交換しました.
図2.1は新品のY型リターンホースの様子です.
リターン側はプレッシャレギュレータ以後の残圧がある為,
フィード側に対してより一層ホースの状態に気をつけなければなりません.
この車両の設計ではポンプ側の内径がタンク側の内径より大きく特別な構造の燃料ホースを使用していることが分かります.
図2.2 燃料ポンプに取り付けられた新品の燃料フィード及びリターンホース |
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図2.2は新品の燃料ホースを燃料ポンプに取り付けた様子です.
これにより燃料漏れの恐れがなくなり,精神面からもライディングを安心して楽しめるようになりました. |
【考察】
X型及びY型では燃料ポンプが燃料タンクと別体式である為,燃料タンクから燃料ポンプ間に燃料ホースが存在します.
燃料ホースは使用や経年劣化により硬化して亀裂が生じ,やがて燃料漏れを発生させて車両火災に至ります.
やはり燃料漏れによる車両火災等を極力避ける為にも,少なくとも2年に1回は交換しておきたい部品であるといえ,
それが車両火災という無用な心配から解放される大きなメリットでもあるといえます.
特に燃料ポンプを使用している車両は強制的に圧力がかかる為,
自然落下式よりも一層燃料ホースのコンディションには気を配らなければなりません. |
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