事例:E‐35
金属疲労によるエンジンマウントボルトのねじ切れについて |
【整備車両】
RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型 推定年式:1983年 参考走行距離:9,400km |
【不具合の状態】
分解整備したエンジンを車体に搭載してボルトを締め付けたところ,規定のトルクがかかる前にボルトがねじ切れました. |
【点検結果】
この車両はメガスピードにてエンジンをオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)したものですが,
エンジンを車両に取り付ける際にマウントボルトを締め付けたところ,規定トルクに達する前にボルトがねじ切れました.
図1.1はねじ切れたエンジンマウントボルトの様子です.
全体的に表面は錆びていますが、内部にまでは及んでいないことから,
錆によるボルト強度の低下への影響は少ないと考えられます.
また断面から締め付け方向の力でねじ切れたことが分かります.
図1.2 ナット側のねじ切れたエンジンマウントボルトの断面 |
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図1.2はねじ切れたボルトについているナットの様子です.
エンジンハンガの接触部付近でねじ切れていることから,締め付け時にトルクが集中した部分であることを示しています.
これらのことからボルトは振動等による金属疲労が原因で強度が落ちていた為に,
規定トルクでの締め付けに耐えられることができず,ねじ切れたものであると判断できます. |
【整備内容】
エンジンのマウントボルトは折れ込んだ部位も含めてすべて新品に交換しました.
図2.1は新品のエンジンマウントボルトとナットの様子です.
新品のボルトは粘りと強度があることに加え,
ナットのセルフロック機構も新品なので,ボルトからの脱落防止の信頼性が確保できます.
図2.2 規定トルクで締め付けられたリヤ下側のエンジンマウントボルト及びナット |
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図2.2はエンジンハンガーにマウントボルトを規定トルクで締め付けた様子です.
ボルト及びナットは新品なので途中でねじ切れることなく,またおかしな手応えもなく,
正確なトルクで締め付けることができました. |
【考察】
エンジンマウントボルト,特に2サイクルエンジンのそれは長年の振動等による疲労により,
再使用した場合にねじ切れる場合が少なくありません.
したがってメガスピードではエンジンをマウントする際は新品を使用することをお客様に推奨しています.
というのは,例え再使用したときに規定トルクで締め付けることができても,
それが古いものであれば必ず金属疲労により弱り,強度が落ちていると考えられるからです.
2サイクルエンジンでも並列2気筒はV型2気筒に比べ,体感でも振動が大きいことが分かります.
やはり可能な限りエンジンマウントボルト・ナット等は新品にしておくことが求められます.
そしてそれと同時にエンジンマウントブッシュも同じくらい衰損している場合が少なくない為,
エンジンを脱着する際はボルト類と合わせて新品に交換しておくことが望ましいといえます. |
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