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事例:E-272

デコンプワイヤの損傷について

【整備車両】 
 LS650 (NP41A) Savage サベージ650  年式:1987年  参考走行距離:約33,000km
【不具合の状態】 
 デコンプワイヤが折れている上,被覆が破れて内部に錆が発生していました.
【点検結果】 
 この車両はエンジン下部からのオイル漏れが著しい為,お客様のご依頼によりメガスピードにてエンジンオーバーホールを承ったものです.ここではその際に修理したデコンプ廻りについて記載します.

図1.1 損傷しているデコンプワイヤ
 図1.1 は損傷しているデコンプワイヤの様子です.黄色楕円で囲んだ部位はワイヤの被覆が破れ,内部の金属が錆びている様子が分かります.また屈曲した状態で固着していることから内部のワイヤの動きに抵抗が発生していることは否めません.

図1.2 破損しているデコンプワイヤホルダ
 図1.2 はデコンプワイヤホルダの様子ですが,黄色の円で囲んだネジの頭が緩め方向に破損していることが分かります.この部位はエンジンをかけるたびに熱にさらされる為,ネジが固着することが少なくありません.おそらく過去に緩めようとして失敗したものであると考えられます.今回はデコンプシャフト廻りも同時に整備する為,養生しながら取り外しました.

図1.3 取り外したデコンプシャフト廻り
 図1.3 はヘッドカバーから取り外したデコンプシャフト廻りの様子です.使用に問題はないレベルですが,シャフトのオイルシール接触部が摩耗していることを踏まえ,すべて新品にすることにしました.


【整備内容】
 デコンプシャフト廻り,ワイヤ,ソレノイド等各部を整備し,関連機関を包括的にリフレッシュしました.

図2.1 デコンプシャフト廻りの構成部品
 図2.1 はデコンプシャフト廻りの構成部品の様子です.整備の段階で幸いすべての部品が入手可能だったため,まとめて新鮮にすることができました.図の左からシャフト本体,オイルシール,レバー,リターンスプリング,シートワッシャ,ナットになります.

図2.2 組み立てられたデコンプシャフト廻り
 図2.1 はデコンプシャフトを組み立てた様子です.図1.3 の取り外したものと比較すれば一目瞭然ですが,新品はシャフトが摩耗していないだけでなく,部品全体が美しく輝いています.わずかな投資でこの様な状態になれるのであれば,迷わす用意したいものです.

図2.3 ヘッドカバーに取り付けられたデコンプシャフト
 図2.3 はヘッドカバーに取り付けたデコンプシャフトの様子です.シールおよびシャフトが新品になったことにより,オイル漏れの心配がなくなりました.

図2.4 清掃したデコンプソレノイド
 図2.4 はデコンプソレノイドを取り外して清掃した様子です.今回の整備で同時にソレノイドを点検することで,デコンプ機構一式整備したことになります.

図2.5 新品のデコンプワイヤ
 図2.5 は新品のデコンプワイヤの様子です.

図2.6 ソレノイドに付けられた新品のデコンプワイヤ
 図2.6 はソレノイドに新品のデコンプワイヤを取り付けた様子です.ピンおよびクリップも同時に新品に交換しました.

図2.7 デコンプシャフト飛び出し量の調整
 図2.7 はデコンプシャフトの飛び出し量を調整している様子です.サービスマニュアルでは2mm~3mm程度が標準とされている為,その範囲になるようにしました.実際に動作させてみるとこの値が適正値であることが分かります.

図2.8 シリンダヘッドカバーに取り付けられた新品のデコンプワイヤ
 図2.8 はシリンダヘッドカバーに取り付けられたデコンプワイヤ周囲の様子です.シャフトの飛び出しが適正量になるようにすると,ホルダ側は図のようなナットの位置になります.図1.2 と比較すれば明らかですが,可能な限り新品部品を使用し,ヘッドカバーを塗装したことにより非常に美しく甦ったことが分かります.


【考察】 
 LS650 通称サベージ650のエンジンは単気筒で650ccという大きな排気量です.その為エンジン始動時にはセルモータの負荷を減らす為デコンプ機構が取り付けらています.セルスイッチを押すたびにソレノイドが動作し,それに連動してワイヤが引っ張られ,カムが排気バルブを押し下げる仕組みですが,セルスイッチを押すたびに毎回必ず引かれるので,ワイヤにかかる力は無視できません.
 今回の事例ではワイヤが曲がっている上被覆が破れて内部が錆びていた為,新品交換にしました.すでに発売から数十年経過している為,新品が入手可能な状況であれば迷わず交換しておいた方が今後のバイクライフを不安なく過ごせることは間違いありません.







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