事例:108
【整備車両】
GSX250RCH (GJ72A) GSX-R250 推定年式:1987年 参考走行距離:約18,100km |
【点検結果】
この車両はお客様のご依頼を承りメガスピードにて各所点検整備を行ったものです.
冷却系統を点検したところ,水路に汚れが堆積していることを確認しました.
図1.1はウォータポンプに接続されるラジエータホースの内側の様子です.
水垢等が蛇の鱗の様に堆積していることが確認できます.
φが大きい部位であれば大きな問題は発生しませんが,狭路では冷却水の流れを妨げオーバーヒートの原因になります.
図1.2はサーモスタットハウジングとサーモスタットの様子です.
サーモスタットとハウジングの合わせ面に小さなゴミやヘドロ等が挟まっていました.
サーモスタットのバルブ周辺は特に水路が狭くなっている為,少しのゴミの詰まりでも,
エンジン冷却性能の低下に大きく影響する場合があります.
図1.3 ヘドロの堆積していたラジエータキャップハウジング |
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図1.3はラジエータキャップ取り付け部の様子です.
バキュームバルブからプレッシャバルブにかけてヘドロの様なものが側面に堆積していることが確認できます.
図1.4はリザーバタンク内部の様子です.
冷却水も汚れていましたが,底にヘドロの様なものが堆積しており,周囲の側面も全体的に汚れていました. |
【整備内容】
水路の詰まりはオーバーヒートの原因になる為,各所を洗浄することから整備を行いました.
図2.1はサーモスタットハウジングを洗浄し,サーモスタットを新品に交換した様子です.
発売が1987年頃でありサーモスタットの衰損を考慮し,この機会に新品に交換しました.
図2.2は内部を洗浄したラジエータキャップハウジングの様子です.
材質が樹脂であることから目立つ錆や腐食等は見られず,十分に再使用可能な状態になりました.
図2.3はリザーバタンクの内部を完全に洗浄した様子です.
底に溜まっていたヘドロ等をすべて除去し,クリーンな状態で再使用する準備を行いました.
図2.4 新品に交換されたラジエータホース及びクランプ |
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図2.4はエンジン内部を冷却し,シリンダヘッドからサーモスタットに接続される通路に設置されたラジエータホースを,
新品に交換した様子です.
同時にクランプも新品に交換することにより,水漏れ防止を図りました.
図2.5は組み立ての完了した冷却系統に圧力をかけて漏れがないか確認している様子です.
実際のエンジンでは暖機時に水圧が100kPaを超えるとラジエータキャップが開弁しますが,
プレッシャテスタによりその状況を作り出し,
実際の走行における状態でホースの繋ぎ目等から水漏れが発生していないことを確認して整備を完了しました. |
【考察】
1987年頃の発売である車両であることから,冷却系統に汚れが堆積していることは想像に難くありません.
水温の異常上昇等,実走行において不具合を発生させていないとしても,この事例の様に実際に分解すると,
各所に水垢等が堆積していることが少なくありません.
水路特にシリンダヘッド内部やサーモユニットのそれは狭路であり,わずかな水垢等が大きな抵抗となり,
冷却水の循環を妨げ,水温上昇の原因になります.
やはり古い車両であれば水廻りは包括的に点検整備しておくことが求められ,
最終的にエンジン暖機時の水圧と同じ圧力をクーリングシステムにかけ,
水漏れ等がないかどうかを確認する必要があります. |
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