完全に頭部の破損したパイロットジェットの抜き取りについて |
【整備車両】
RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ)2型 年式:1984年 参考走行距離:------ km |
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【不具合の状態】
パイロットジェットの頭部が完全に破損していて取り外せない状態でした。 |
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【点検結果】
今回の事例はお客様からのご依頼により、 ”パイロットジェットの頭がなめていて外せない” ということで、キャブレータ単体で送っていただきメガスピードにて抜き取りを実施したものです。 |
図1.1 完全に破損しているパイロットジェット頭部 |
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図1.1 は送っていただいたRG250Γ・GJ21A型のいわゆる84年式2型のキャブレータパイロットジェットの様子です。頭部が破損している上に穴も詰まっていました。通常マイナスドライバの様なもので取り外しますが、破損が酷くひかっかりが全くない為、別の方法で慎重に抜き取ることにしました。 |
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【整備内容】
パイロットジェットの取り付け部が筒の中にある為、わずかな作業ミスで取り返しのつかない事態に陥るリスクの高い部位であると言えます。ボデーにも接触しない様に抜き取る必要がある為、慎重に工程を検討しました。 |
図2.1 はパイロットジェットのセンターに穴をあけ、引き抜きのとっかかりを作っている様子です。筒の中にパイロットジェットがある為、わずかな角度のズレや振れも許されません。また穴を開け過ぎてジェットを貫通し、ボデーにまで達すればポートが広がってしまう為、取り返しのつかない事態に陥ります。
したがって、慎重に慎重を重ねてセンターに穴をあけました。 |
図2.2 は正確にセンターに穴を開けたパイロットジェットの様子です。パイロットジェット本体よりも細く、かつ抜き取り工具の先端が引っかかる程度の深さおよび外径に仕上げました。
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図2.3 はパイロットジェットを抜き取っている様子です。筒の内径ギリギリで工具が入り、肝心のパイロットジェットも絶妙な感じで喰い付きました。 |
図2.4 は抜き取ったパイロットジェットの様子です。ネジ溝を含め、頭部以下は全く破損させずにそのままで抜き取ることができました。これによりボデー本体のパイロットジェット取り付け側も無傷で保存することができました。 |
図2.5 点検洗浄したパイロットジェット取り付け部 |
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図2.5 はパイロットジェット取り付け部を洗浄し、内部を点検した様子です。ポートや座面等、重要か所は全く無傷です。上部の傷になっている部分はメガスピードにて部品を受け取った段階ですでに存在していたものです。おそらく過去に固着したパイロットジェットを取り外そうともがいた末にマイナスドライバで傷つけてしまったものであると考えられますが、性能には影響する範囲にはありません。 |
図2.6 は新品のパイロットジェットを取り付け、実際に問題が無いか確認している様子です。しっかり確実に締め切ることができることを確認し整備を完了しました。 |
図2.7 パイロットジェット抜き取りの完了した2型キャブレータ |
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図2.7 はパイロットジェットの抜き取りの完了したキャブレータの様子です。2型の特徴はメインエア系統にあります。図の様に取り出し口はニップルが圧入されており、ソレノイドで制御する構造です。
84年の一年間しか製造されなかった車両のキャブレータであり非常に貴重なものとなります。当初のままでは使い物になりませんでしたが、今回パイロットジェットの抜き取りにより再生可能になり、ご依頼主のお客様に発送して案件を終えました。 |
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【考察】
今回抜き取りを実施したキャブレータの車両であるRG250Γ・GJ21A2型の発売は1984年で、85年にはモデルが変わっていますから製造が1年程度ということになります。その様な車両の部品を万が一破損させてしまった場合、新品はまず入手することが不可能であり、中古部品でもまずモノがないので復元することができません。分かりやすく換言すれば
”弁償できない” ということになります。
弁償できないものを破損させる可能性がある仕事は非常にリスクが高いと言えます。もし壊してしまったら、いくらお金があっても復元できないからです。今回の事例でも電動の機械工具を使用しましたが、使い方を誤ったり、わずかに手元が狂ったりすればキャブレータを破損させる可能性を否定できません。抜き取り成功の報告をお客様にお伝えしたところ、「地元の業者に断れたので助かりました」というお言葉をいただきました。もちろんそれなりのリスクに見合った作業工賃をいただきましたが、助かったと言われればこちらとしても仕事をしたかいがあります。
リスクも考えて仕事は選ばなくてはなりませんが、それでも可能な限りお客様のご要望に応えられるよう努力していきたいと改めて考えさせられる事例となりました。 |
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