エキストラクターによる頭部破損パイロットジェットの抜き取りについて |
【整備車両】
GSX-R250CK (GJ72A) 1988年式 走行距離:3,000km |
【不具合の症状】
パイロットジェットや各ポートの詰まりによりエンジンが始動せず、
ジェットの頭もなめていて、ドライバーが引っかからない状態でした。 |
【点検結果】
長期保管車両で始動不可能な状態にあり、
各所点検した結果、燃料系統に不具合があると判断しキャブレータを分解しました。
図1は通路の詰まったパイロットジェットの様子です。
ジェットの通路や各ポートは腐ったガソリンで完全にふさがれていました。
図1 、腐ったガソリンにより通路がふさがれ、さらに頭のなめていたパイロットジェット(右側) |
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右側のパイロットジェットは頭がなめていて、ドライバーでは回せない状態でした。 |
【整備内容】
頭のなめたボルトや折れ込んだボルト等の抜き取りには様々なアプローチがありますが、
この事例ではエキストラクターを使用しました。
図2、エキストラクターによるパイロットジェットの抜き取り |
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図2はエキストラクターでパイロットジェットの抜き取りを行っている様子です。
ジェットは真鍮製で引っかかりが悪い為、エキストラクターを使用する為に下地を作りました。
図3、エキストラクターにより抜き取られたパイロットジェット |
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図3はキャブレータボデーから引き抜いたパイロットジェットの様子です。
ジェットをそのまま引き抜いたので、キャブレータボデー側のジェットシートに損傷はありませんでした。
頭がなめているため、パイロットジェットを新品に交換し整備を完了しました。 |
【考察】
キャブレータの修理で、ジェットの頭がなめているものの抜き取りは少なくありません。
特にパイロットジェットのように細いものは、ドライバーの角度やトルクを誤るとすぐに頭が破損してしまいます。
素材が真鍮なので粘りがなく、弱い部分は無理な力に耐え切れずに割れてしまいます。
それを無理に回そうとして更に破損させ、
結果的にドライバーの引っ掛かる山がすべてなくなっているものが見受けられます。
この様な状態になってしまうと、もはやドライバーではジェットを回転させることができないので、
何らかの方法で引き抜くことを考えなければなりません。
パイロットジェットは、ジェットの収まるハウジングの奥に取り付けられるので手が入らず、
抜き取りの環境としては比較的厳しい条件になります。
この事例ではエキストラクターを使用する為に下地を作り、パイロットジェットを引き抜きました。
その際に丸ごと取り出すことに留意し、実行したので、ジェットシートに損傷はありませんでした。
引き抜きの際にはシートやハウジング等キャブレータボデー側を極力破損させないようにしなければなりません。
やはりこの様な事態にならない為にも、ジェット特にパイロットジェット等強度の低いものの頭は慎重に回す必要があります。 |
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