事例:E-181
【整備車両】
RG250EW (GJ21A) RG250Γ(ガンマ) 1型 推定年式:1983年 参考行走行距離:約9,200km |
【不具合の状態】
エンジンが吹け上がる際にひっかかりのある回転数が存在しました. |
【点検結果】
この車両はお客様のご依頼により5,000回転付近のエンジンの吹け上がりが悪いという不具合を修理したものです.
各部点検・測定の結果不具合はキャブレータの調整不良でしたが,
今回の事例では関連性のあるエアフィルターについて記載します.
図1.1はエアクリーナボックスの蓋をあけフィルターを確認した様子です.
いわゆる“ターボフィルター”と呼ばれる目の粗いフィルターが取り付けられていました.
確かに吸気効率は上がりますが,
外観からも明らかなようにスカスカのスポンジでは細かなゴミをろ過することは不可能であるといえます.
図1.2はターボフィルターを取り外した様子です.
裏面に接合された形跡があるので,汎用品を形成して作られたものであると推測されます.
汚れは比較的少ないものの,ろ過能力が期待できないこと,空燃比が狂うことを考慮して取り外しました.
取り付けボルトの錆具合や樹脂ワッシャは劣化具合から新車当時から使用されていたものであると推測されます. |
【整備内容】
エアフィルタは純正の部品供給があるため,新品に交換するとともに,樹脂のワッシャとボルトも同時に新品にしました.
図2.1は新品のエアフィルタの内側の様子です.
スポンジの目が細かく高いろ過能力が期待できます.
図2.2 エンジンに取り付けられた新品のエアフィルタ |
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図2.2は新品のエアフィルタをエアクリーナボックスに取り付けた様子です.
固定する樹脂ワッシャ及びボルトが新品になったことにより光沢が蘇り,
見た目の美しさも取り戻すことができました.
またキャブレータのオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)とセッティングを同時に行い,
最適な空燃比に調整することによりスムーズなエンジンの吹け上がりを実現しました. |
【考察】
純正のエアフィルターをいわゆるターボフィルターに交換した時には,厳密にいえば空燃比が狂うことになり,
その場合は車両全体のパーツを見てセッティングし直す必要があることが少なくありません.
今回は5000回転付近でエンジンの吹け上がりが悪い状態だったため,
キャブレータの再セッティングに沿う形で,フィルタは純正を採用しました.
私が自分の車両にパワーフィルターやターボフィルター等の濾過力の低いエアフィルターを使用する場合は,
例えそれによりエンジンの寿命が短くなり損傷したとしても,修理に必要な部品が容易に入手できる車両に限定します.
そしてこの車両のように発売が1983年という昔のものに対しては,今ある状態を維持するのがベストであり,
それには純正の目の細かいろ過能力の優れたフィルタが最適であると考えます.
したがって,自分のバイクを大切にするのと同様に,お客様にもそのように助言させていただいております. |
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