事例:133
エアフィルタースポンジの劣化と密室化しているエアクリーナボックスについて |
【整備車両】
RG250EW-4WC (GJ21B) RG250Γ(ガンマ) 4型 推定年式:1986年 参考走行距離:約3,900km |
【不具合の状態】
エアフィルタースポンジが劣化していてボロボロになっていました. |
【点検結果】
この車両はお客様のご依頼によりメガスピードにて各部分解整備を承ったものです.
今回の事例ではエアフィルターについて記載します.
点検時にエアフィルターがボロボロになっていることが確認された為,フィルター交換が必要でしたが,
エンジンのオーバーホールの実施に際しエンジンを車体から降ろしていたことから,
普段は取り外すことができないエアクリーナボックスも同時に点検洗浄しました.
図1.1はエアクリーナボックスごと車体から取り外した様子です.
エアフィルタースポンンジが部分的に千切れていおり,ボックス内部が埃と油にまみれていました.
またボックス下部や普段外部から目視できない部分に泥と油の混合物が堆積していました.
図1.2はエアフィルタースポンジと軽くつまんだ様子です.
わずかな力でつまむ程度で容易に千切れてしまう程材料が劣化していました.
これでは空気のろ過どころか,フィルターそのものがエンジン内部に吸い込まれてしまう恐れがあります.
図1.3はエアクリーナボックスを取り外した車体の様子です.
構造的にエアクリーナボックスを取り外す為にはエンジンを降ろす必要があり,
今回は同時にエンジンオーバーホールを実施していた為,
エアクリーナボックスを取り外して周囲を点検洗浄するとともに,
ボックスそのものも点検洗浄を実施しました. |
【整備内容】
新品の部品供給がある為,フィルタースポンジを新品に交換し,ボックスは全体的に点検洗浄を実施しました.
図2.1は新品のエアフィルタースポンジの様子です.
湿式の為全体的にオイルに浸された状態で入荷します.
取り外した古いものに比べ,スポンジそのものが張りがあり,十分に空気をろ過する能力が期待されます.
図2.2 車体に取り付けられたエアクリーナボックスと新品のエアフィルタースポンジ |
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図2.2はエンジンを取り付けた車体に点検洗浄の完了したエアクリーナボックスを取り付け,
新品のエアフィルタースポンジをエアクリーナボックスに取り付けた様子です.
ボックス内部の泥と油の混合物もすべて除去し,新鮮な空気を取り入れることが可能になりました. |
【考察】
RG250ΓのエアクリーナボックスはGJ21A型もGJ21B型もともにエンジンと車体に挟まれた,
いわば密室”の状態であり,部品を切断したり傷つけたりしない様に取り外すには,
通常の方法ではエンジンを降ろさない限り不可能です.
したがって今回の事例の様にエンジンを降ろした場合は,
可能な限りエアクリーナボックスを取り外して点検整備しておくことが望ましいといえ,
実際に取り外してみるとかなり汚染されていることが少なくありません.
これは普段取り外す機会が少ない部品がかかえる共通の問題であるといえますが,
少なくともエンジン内部に供給する混合気のうち,
空気を清浄にするという大切な役割を担っている部分であることを考えれば,
やはり走行距離や経年に応じて取り外して確実に内部まで洗浄することが望ましいといえます.
フィルタースポンジについても,湿式で発売から数十年経過しているものは極度に劣化しているケースが非常に多い為 ※1 ,
状態に応じてぬかりなく整備されなければならない部位であるといえます.
※1 “エアクリーナスポンジの劣化について”
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