事例:E‐97
劣化したエアクリーナボックスドレンホースの亀裂の発生によるオイル漏れについて |
【整備車両】
GSX250RCH (GJ72A) GSX-R250 推定年式:1987年 参考走行距離:約18,100km |
【不具合の状態】
車両中間部からオイル漏れが発生していました. |
【点検結果】
この車両はお客様から各所分解整備のご依頼を承り,メガスピードにて整備を行ったものです.
床にオイルの様なものが垂れているのを発見した為,その垂直方向を確認すると,
エアクリーナボックスドレンホース先端からオイルが漏れていることが分かりました.
図1.1 オイルの漏れているエアクリーナボックスドレンホース先端 |
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図1.1はエアクリーナボックスに取り付けられているドレンホースの様子です.
先端の最下部からオイルが漏れ出していることが分かります.
エアクリーナボックスには湿式のエアフィルタが取り付けられている為,
漏れ出しているのは,そのオイルとエンジンから吹き返した混合気の混合物であると考えれられます.
図1.2は取り外したエアクリーナボックスとそれに接続されているドレンホースの様子です.
黄色の四角Aの部分がエアクリーナボックスに対するホースの接続部であり,密封式の構造の為出口はありません.
またエアクリーナダクト側から内部を点検すると,ダクトの位置固定リングがずれていることが分かりました ※1 .
図1.3はオイル漏れの発生していたドレンホース先端の様子です.
黄色の四角Aで囲んだ部分に亀裂が入っていることが分かります.
オイルや吹き返した混合気の一部はこの亀裂から漏れ出していたものであると判断することができます. |
【整備内容】
ドレンホース先端に入っていた亀裂の完全な修復は費用対効果の点から困難であることや,
全体的に経年劣化等による硬化も発生していた為,新品に交換しました.
図2.1 新品のエアクリーナボックスドレンホース先端の構成内容 |
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図2.1は新品のエアクリーナボックスドレンホース先端の様子です.
ホースにキャップとクリップが取り付けられており,
ホース内部に溜まったオイルや混合気の混合物を車体下部から容易に排出しやすい構造に変更されていました.
図2.2 エアクリーナボックスに取り付けられた新品のドレンホース |
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図2.2は新品のドレンホースをエアクリーナボックスに取り付けた様子です.
ホースと同時に使用により広がっていた締め付けクリップも新品に交換しました.
図2.3 車体に取り付けられた新品のエアクリーナボックスドレンホース先端部 |
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図2.3は新品のドレンホースをエアクリーナボックスに取り付けた様子です.
取り付けや取り回し等に問題がないことを確認して整備を完了しました. |
【考察】
エアクリーナボックスにはキャブレータ側から吹き返しによる混合気が溜まるだけでなく,
GJ72A型の様にエアフィルタが湿式である場合,その仕様上オイルが浸み出してくる場合が少なくありません.
したがって,エアクリーナボックスにはドレンホースが取り付けられている場合は,
定期的にホースから吹き返した混合気やオイル,その混合物を取り除く必要があります.
この事例ではもともと取り付けられていた,おそらく車両発売当時からのものと考えられるホースに溜まったオイルは,
密封式の為ホースを取り外す必要があり,手間がかかることや,
機関として一般ユーザーから安易に考えられている,あるいはホース自体の存在認識がない場合が少なくなく,
内部のオイルの除去はおろか,エアクリーナボックスからホースの付け根が脱落して車体中間部でひっかかっていたり,
しまいにはドレンホースそのものが装着されていないケースが多々見られます.
今回の事例ではホース先端が劣化による亀裂を発生させていて,そこから内容物が漏れ出していました.
ホースそのものに硬化や劣化が著しい為新品に交換しましたが,
新品では車体下部から容易に内容物を除去できるようにキャップ式に改良されていました.
やはり環境を考慮すればホースが脱落あるいは除去されたまま大気解放されている状態は避けなければならず,
それ以上に,エアクリーナボックスから垂れるオイルが車体に付着し周囲を汚染することは,
様々な不具合を発生させる原因につながるおそれがある為,
常日頃から良好な状態に維持,整備されることが求められます.
※1 “エアクリーナダクト固定リングの位置ずれについて”
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