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事例:D‐17

雨水の侵入がもたらすソケットの固着と端子の接触不良について (2)


【整備車両】

 RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型  年式:1986年  走行距離:約16,500km


【不具合の状態】

 ウインカーが点滅したりしなかったりする症状が発生していました.


【点検結果】

 この車両は2年程度前に車検が切れてから乗られていないお客様から,

再び乗られるということで不動になっている状態を元に戻し,車検を取得するというご依頼を受け,

メガスピードに入庫されたものです.

バッテリを新品に交換し,保安部品の点検を行ったところ,

左後ろのウインカーが点滅したりしなかったりする症状が出ていました.

バルブ廻りを点検する為にレンズカバーを取り外したところ,

ソケットとバルブの金属部が錆と腐蝕により固着していて容易にバルブが取り外せない状態でした.




図1.1 錆の発生しているウインカー内部

 図1.1は左後ろのウインカーレンズを取り外した内部の様子です.

全体的に錆びた赤い鉄粉で覆われていて、金属部はほとんど錆びていました.

またレンズとホルダをシールするゴムも赤い鉄粉が全体的に付着していました.



図1.2 全体的に錆びているウインカレンズ取り付けビス

 図1.2はウインカーレンズを固定していたビス及びガスケットです.

ねじ溝部に錆が発生していた為,かじりが生じていて取り外しにかなりのトルクが必要でした.

ビスの先端まで全体が錆びていることから,ウインカ内部にも水分が侵入していたことは想像に難くありません.



図1.3 錆の著しいバルブソケット

 図1.3はバルブを取り外したソケットの様子です.固着していて取り外しが困難でした.

全体的にかなり錆びており、バルブのアースとなる側面も錆により接触不良が発生していたと判断できます.

また電源側の端子を圧着させる為のスプリングが固着していて、バルブを押し下げることができませんでした.

バルブの固着はソケット側面とバルブの金属部のみならず,

スプリングの固着によるバルブの固定も複合して原因になっていると考えられます.



図1.4 ソケット部の錆びたバルブ

 図1.4は取り外したバルブの様子です.


ソケット部の赤錆は,ウインカ側と固着していた部分です.

パッキンの劣化による雨水の侵入と同時に,取り外したビスの状態を考えると,

雨天及びその後の湿気がウインカ内部に侵入したものであるといえます.



【整備内容】

 状態の悪いウインカをオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)するコストを考えた結果,

中古のウインカを点検整備して使用したいというお客様のご希望により,

所有されていた中古のウインカを取り付ける方法をとりました.

今回のケースと同じような症状を発生させていたRG400EW(HK31A)RG400ガンマ1型のリヤウインカの場合は,

オーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)を行うことにより機能を回復しました.




図2.1 中古ウインカバルブの点灯点検

 図2.1はバルブが正常に点灯するか,ウインカ単体で点検している様子です.

お客様に提供していただいた部品が中古である為,取り付ける前に確実に動作するか点検を行いました.



図2.2 新品のウインカレンズ取り付けビス及びガスケット

 図2.2は新品のウインカレンズ取り付けビスと,そのガスケットの様子です.

錆びていたビスや歪んだガスケットを新品にすることにより,

ウインカ内部への雨水の浸入をシールする機能の回復を図りました.



図2.3 点検整備の完了したウインカ

 図2.3は点灯点検を行い,清掃してレンズの合わせ面に新品のパッキンを取り付けた様子です.

古いパッキンの下部が錆で赤くなっていたことから,

何らかのかたちで内部で発生した錆がレンズとパッキンの間に流れ込んだと考えられます.

この部分も防水機能を回復させる為,ビスと同様に新品のパッキンを使用しました.



図2.4 整備が完了して正常に点滅しているウインカ

 図2.4は整備が完了し,正常に点滅している左後ろウインカの様子です.

他の部分の整備も含めてすべての不具合が解消した段階で検査場に持ち込み,

継続検査を受け,新しい車検証を取得しました.



【考察】

 古い車両では、外観は正常に見えても内部が腐蝕していることが少なくありません.

この事例の車両では左側のウインカー内部が錆だらけになっていたものの,

右側のウインカー内部はほとんど汚れておらず、機能も問題ない状態でした.

したがって何らかの原因で左側だけが雨水にさらされる環境にあったと考えられます。

これは,サイドスタンドをかけた状態で長年保管し続ける為に受ける重力と水分の関係が,

左側のウインカに著しく影響するということが否定できないのは,

左のウインカ内部のみ錆が発生していることからも明らかです.

いづれにしろ,ウインカ内部の錆は長期保管中に発生したものであると考えるのが自然であり,

長期間保管する場合も含めて,使用している時も,定期的にパッキンの交換等を行い,

ソケット部等の金属を錆させないことが重要になります.



 今回の事例では,現在錆びて状態の悪いウインカをベースとして,

オーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)する為に投資するよりも,

ベースとして錆のない状態の良いウインカを取り付けたいというお客様のご希望を承り,

持ち込んでいただいた中古のウインカを点検して使用しました.

中古で素性の分からないものは点検整備してから使用する必要がありますが,

時として取り外した状態の悪い部品をオーバーホール【overhaul】するよりも,

状態の良い中古部品を点検整備した方がコストや部品の寿命の観点から推奨される場合があります.

したがって,メガスピードではオーバーホール【overhaul】のみならず,

常に様々な選択肢をご提案させていただけるよう努めております.

新品の社外のウインカを取り付ければ間違いありませんが,

今回はオリジナルの外観を保ちたいというお客様のご希望にそうかたちで整備を進めました.

RG400Γ(HK31A)には1型と2型が存在し,リヤウインカの形状が違う為,2型には2型のリヤビューがあります.

ウインカの変更は車両の全体的な雰囲気を変えてしまう場合があり,

やはり純正の姿をご希望される場合であれば,可能な限りそのご要望に応じられるよう精進してまいります.





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