トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 電装関係の故障、不具合、定期点検、一般修理の事例 (事例:41~50)


事例:D-46

レギュレータの故障による充電不良がもたらすウインカーの動作不良について

【整備車両】 
 R1-Z (3XC) 3XC1  推定年式:1991年  参考走行距離:約15,200 km
【不具合の状態】 
 ウインカーの点滅が遅かったり,ニュートラルランプが暗かったり,電気系統に異常がありました.
【点検結果】 
 この車両は各部に不具合が発生していた為,メガスピードにて整備を承ったものです.今回の事例ではウインカーの点滅が遅い状況について記載します.よくあるのがリレーの不具合によるウインカーの点滅不良ですが,今回はヘッドライトを始めその他の灯火類がすべて暗かった為,充電不良を疑いました.

図1.1 負荷をかけた状態で十分に充電されていないバッテリ
 図1.1はヘッドライトON,ブレーキランプON,ウインカーONにして負荷をかけ,アイドリング状態でのバッテリの充電状況を測定した様子です.約6Vと,正規の半分しか充電していませんでした.これではウインカーを点灯させるのには不十分です.完全な充電不良と言えます.充電不良の場合,発電不良なのか,電圧制御不良なのかを切り分ける必要があることから,次にステータの状態を点検しました.

図1.2 ステータコイルの抵抗測定
 図1.2はステータコイルの抵抗を測定している様子です.3線ともおよそ0.5Ωであり規定値に収まっていました.このことから簡易的にコイルは問題ないと推測することができます.しかし推測に過ぎない為,実際にステータを取り外して点検を実施しました ※1

図1.3 故障していたと推測されるレギュレータ
 図1.3は故障していたと推測されるレギュレータを取り外した様子です.フライホイールロータを含め,ステータコイル等発電系統を点検した結果,配線被覆が破れていた以外には大きな異常がないことから,電圧制御不良と判断し,レギュレータの故障による充電電圧制御不良と判断しました.


【整備内容】
 今回の充電不良はレギュレータの破損による電圧制御不良と判断し,新品に交換しました.また充電系統に異常が発生した場合,気づかずにエンジンを使い続けることを避けるため,常にモニターする目的で電圧計を取り付けました.

図2.1 車体に取り付けられた新品のレギュレータ
 図2.1は新品のレギュレータを車体に取り付けた様子です.取り付けねじにアース線が共締めになっている為,接触部を研磨して導通を確保するとともに,取り付けボルトを新品に交換しました.

図2.2 正常に充電されているバッテリ
 図2.2はアイドリング状態で,灯火類は無負荷の状態での充電状況を測定した様子です.エンジンを回転させるのに必要な電力のみ消費する状況で約14V程度の充電性能が確認できました.ヘッドライトON,ブレーキランプON,ウインカーONの状態でもアイドリングで12V程度の電圧を確保していました.
 また充電系統の修理と合わせてバッテリを新品に交換しました.なぜならメガスピードに入庫される前にどれくらいの距離が充電不良の状態で走行されたか不明であり,仮に6V程度の電圧で使用し続けられていたとすれば,バッテリそのものがダメになっている可能性が高い為です.そしてダメになっているバッテリに充電し続けることで充電系統に負荷をかけることは極力避けるべきです.

図2.3 新たに設置された電圧計
 図2.3は新たに新品の電圧計を設置した様子です.これにより走行中は常に電圧に注意を払うことが可能になり,万が一充電不良に陥った場合はすみやかにエンジンを停止することができます.もっともキックの無いモデルでは,場所によっては緊急避難としてエンストするまでエンジンを止めてはならない状況もあります(一度止めるとセルで再始動する電力は残っておらず二度と始動できない状況になる可能性がある為)が,やはり異常が発生した場合は可能な限り速やかにエンジンを切ることがその他の電装品の故障を回避する大きな手段になることを忘れてはなりません.


【考察】 
 電装品は必ず壊れます.プラスチックが劣化して軽く触れただけでパキパキ割れる様に,半導体も使用による寿命を迎えます.特に電圧制御を担い余剰電力を熱として放出するような過酷な仕事をするレギュレータは尚更寿命が短いといえます.そのことをまず頭に入れておかなければなりません.モノに永遠などないのです.
 発売から10年程度経過した車両にポツポツ充電不良が発生しているケースが見られます.そして20年程度経過しているモデルであれば,レギュレータは故障して当たり前,むしろバッテリ点火の車両であれば,過去の整備履歴が不明であれば真っ先に交換すべき部品であると言えます.そしてインジェクションが主流となった今,充電不良は始動,点火,燃料供給といった重大作動をすべて不動にします.この事例のR1-Zの様に,キック始動,CDI点火,キャブレータ仕様であれば,バッテリはなくてもエンジンはかかりますし,その状態を維持することができます.しかしその様な車両は今後消えていく運命にあるのですから,充電系統には特に気を遣う必要があるのです.
 また,例えCDI点火といえども,内部にマイコンが使われているモデルであれば,5Vを切った状態で無理に使い続ければ動作が不安定になり破損の直接的な原因になります.破損しても新品で調達できればラッキーで,やはり壊れる頃にはメーカー絶版になっていることが非常に多い為,いくらお金を積んでも新品は購入できません.その場合は主に中古部品で対応することになりますが,中古は所詮中古であり,残り寿命がどのくらいあるか分かりません.もしかしたらすでに故障しているかもしれません.したがって,CDIはできるだけ部品供給のあるうちに新品に交換しておくことが望ましいと言えます.
 今回の事例では再びバッテリの無い状態で気づかずに無理に走行するといった状況を回避すべく,電圧計を新たに設置しました.これにより常時電圧がチェックできるようになりました.やはり発売から少なくとも20年以上経過したモデルであれば,電圧計は設置しておくことが望ましいと言えます.


※1 ステータコイル配線被覆の破れと取り付けボルトのナメについて





Copyright © MEGA-speed. All rights reserved.