事例:D‐28
オイルレベルスイッチ可動端子部の接触不良による警告灯の不点灯について |
【整備車両】
RG250EW-4WC (GJ21B) RG250Γ(ガンマ) 推定年式:1986年 参考走行距離:約3,900km |
【不具合の症状】
オイル残量警告灯が点灯しない状態でした. |
【点検結果】
この車両はメガスピードにて各所分解整備のご依頼を承ったものです.
その中でも今回の事例ではオイル廻りの点検による不具合の発見及び整備を記載します。
図1.1はオイルタンクから取り外したオイルレベルスイッチの様子です.
黒い四角A及びBはフロート側の端子であり腐食により導通不良を発生させていました.
機能としてはこれがオイルレベルスイッチ本体と接触することにより導通し,オイルレベル警告灯が点灯します.
今回の事例ではオイルレベル警告灯が点灯しなかった為,オイルレベルスイッチ単体で点検したところ,
端子間の接触不良によるものであることが確認できました.
図1.2 接触不良を発生させているオイルレベルスイッチ側端子部 |
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図1.2は接触不良を発生させていたオイルレベルスイッチ本体側端子部の様子です.
黒い四角C及びDにそれぞれ図1.1で示したA及びBが接触して回路がつながる仕組みですが,
導通不良により回路が成立せず,オイルレベル警告灯が点灯しませんでした. |
【整備内容】
今回取り外したオイルレベルスイッチは,本体上部の配線状態を含めて全体的にが良好であることから,
端子部を研磨して部品を再生させることで進めました.
図2.1 修正研磨,角度調整されたフロート側端子部 |
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図2.1はフロート側の端子部を修正研磨して電気の通りを良くすると同時に,
わずかに曲がっていた端子の角度を調整して左右の位置を合わせました.
これによりフロート落下時における本体側への端子の接触面が安定し,電気の通りも正常になりました.
図2.2 修正研磨されたオイルレベルスイッチ本体側の端子部 |
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図2.2はオイルレベルスイッチ本体側の左右各端子部を修正研磨した様子です.
同時に端子の水平角度を微調整し,フロート側端子部との接触をより安定したものにしました.
また研磨された端子により導通状態が改善しました.
図2.3 点検洗浄されたオイルタンクに取り付けられたオイルレベルスイッチ |
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図2.3は点検洗浄の完了したオイルタンクに,修正されたオイルレベルスイッチを取り付けた様子です.
取り付け部のパッキンを新品に交換することによりオイル漏れの防止を図りました.
スイッチに接続されている2本の配線の状態は非常に良好であることが分かります.
特にRG250ΓにおいてGJ21AもGJ21Bも同様のスイッチを使用しており,その配線が破損している例が少なくない為 ※1 ,
オイル廻りの点検事項の必須項目といえます.
図2.4 新品に交換されているメーター内インジケータバルブ |
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図2.4はメーター内部のインジケータバルブを新品に交換している様子です.
今回の整備ではオイルレベル警告灯を含めたメーター内部のバルブをすべて交換することにより,
修理されたオイルレベルスイッチと合わせてオイル管理に万全を期することが可能になりました.
やはり発売が1986年頃のモデルであれば,包括的な整備は必須であるといえます.
図2.5はオイルレベル警告灯の点灯を確認している様子です.
オイルレベルスイッチ単体で点灯することを確認した上でオイルタンクに組み付け,
その他オイル廻りの整備一式を完了しました. |
【考察】
この車両は他店で購入されたお客様が公道を走行する前に長期保管されていて,
改めて乗り出す為の各所分解整備をメガスピードにて承ったものです.
入手されてからは一度も乗られていないものであり,やはりその様な場合は少なくとも安心安全の為,
オイル廻りの整備は最低限しておく必要があります.
今回の事例ではオイルレベルスイッチの接触状態が悪化していた為,オイルレベル警告灯が点灯しない状態でした.
この状態ではオイルがなくなってもインジケータによりライダーに知らせることなく,
オイル切れによるエンジン焼き付きが発生する可能性が否定できません.
なぜなら,オイルタンクの色が黒であることや,構造上オイルの残量が外部から全く分からない為,
ライダーがオイル切れに気づかない危険性がその他の2サイクルエンジン搭載モデルより格段に高いからです.
やはりこの様な環境ではより安全性を考慮したシステムを有効活用すべきであり,
まずはそのシステムそのものが正しく作動するかどうかを確認する必要性を改めて認識しなければならないといえます.
※1 “オイルレベルスイッチ配線の損傷と短絡による車両火災の危険性について”
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