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事例:D‐37

コネクタ端子の接触不良による発熱と灯火類保安部品の動作不能について


【整備車両】

 GSX400R (GK71B) GSX-R 2型  年式:1985年  実走行距離:メーター1周(約10万km)+22,000km


【不具合の状態】

 走行中に灯火類がすべて消灯してしまう状態でした.


【点検結果】

 
この車両は走行中に灯火類がすべて消灯してしまうという不具合が発生したため,

お客様のご依頼によりメガスピードにて点検整備を実施したものです.

エンジンはかかり走行できるものの,保安部品を含めた灯火類が作動しないということから,

2系統に分岐する元の部位で不具合が発生していると推測し,配線図を元に故障診断を実施しました.

また不具合が発生したりしなかったりするということですが,

実際に車両お預かりの際にお客様がメータ周囲を手でゆすった際に,

メータ内部のニュートラルランプが薄くなったり戻ったりする現象を確認しました.

これは断線を含む接触不良を示しており,再現性を確認・共有したことになります.



図1.1 不具合の可能性のあるイグニションスイッチコネクタ

 図1.1は灯火類と点火系統を分岐しているイグニションスイッチのコネクタの様子です.

配線図からGK71Bはイグニションスイッチで大きく点火と灯火で分岐しているため,

キースイッチを最上流としたメインハーネスの分岐までの間に接触不良が発生していると考え,

手がかりとしてイグニションスイッチのコネクタを点検しました.



図1.2 焼損した形跡のある灯火類の主電源

 図1.2はイグニションスイッチのコネクタを取り外した様子です.

右端上部が焼損して焦げていることが分かります.

これは何らかの原因で端子部が発熱した結果を示しており,

その原因に接触不良による抵抗増大が考えられます.



図1.3 焼けた形跡のあるメス側端子

 図1.3は焼損した灯火類主電源の110型メス側端子を取り外した様子です.

端子の表面に溶けたコネクタの一部が付着していました.



図1.4 焼けた形跡のあるオス側端子

 図1.4は灯火類主電源の110型オス側端子の様子です.

やはり熱により溶解したコネクタと見られる樹脂が付着しています.



図1.5 熔損した端子取り付け部

 図1.5は焼損したコネクタ端子取り付け部の様子です.

左上部が灯火類の主電源ですが,取り付け部が黒く焦げており,周囲が溶けていることが分かります.



図1.6 全く抵抗なく脱着してしまう端子

 図1.6はコネクタから取り外したオスとメスの両端子を接続した様子です.

互いに組み付けても全く手応えがなく,すぐに抜けてしまう状態でした.

これではわずかな振動でも接触不良が発生し,電流を正しく流すことができませんし,

部位的にもお客様に実践していただいたニュートラルスイッチランプの点灯状態について説明がつきます.

確認のため,新品の110型端子のオスとメスを組み付けたところ,抜こうとしてもかなりの手ごたえと抵抗があり,

簡単には外れない程度に結合していたことから,

この取り外した端子が接触不良を起こしていたことは明らかであると結論付けられます.



【整備内容】

 端子を洗浄研磨し,メス側を潰して抜け止め加工すれば再使用も可能ですが,

すでにコネクタ端子接続部が溶けていることから,元の位置ではガタが生じるため使えない状態でした.

2つある未使用の空きスペースを使用することも可能ですが,今回はギボシ端子を使用して,

コネクタを通さず単体で確実に接続することで修理しました.



図2.1 新設したギボシ端子

 図2.1は電源上流にメス端子,下流側にオス端子をそれぞれ取り付けた様子です.

特に下流側は被覆露出部が数センチしかなく,すぐメインハーネスに覆われてしまうため,

配線に端子を圧着させる作業が困難でした.

しかしだからこそしっかりとした取り付けが重要であり,

振動による引っ張りや圧縮も踏まえて両側ともに半田付けをして確実にギボシ加工しました.



図2.2 正常に接続された灯火類主電源

 図2.2はギボシ加工を施した端子を接続した様子です.

イグニションのコネクタとは別に単体で配線することにより,接続の確実性及び整備性の向上を図りました.


これによりヘッドライトやストップランプを始めとする灯火類に確実に電気を供給することができるようになりました.



【考察】

 年式の古い車両の場合,経年や使用による配線及び端子,コネクタの劣化等により,

接触不良が発生することが少なくありません.

今回の事例では灯火類が消灯してしまうものの,エンジンは止まることなく走行し続けられたということから,

灯火系統に不具合が発生していると推測しました.

またメーターやブレーキランプ,ヘッドライトその他すべて照明が消えたということから,

大元の電源が喪失した可能性を考え修理に取り組みました.

不具合の原因は端子の圧着性能低下によりコネクタ接続部に抵抗が増大して発熱量が増え,

その結果コネクタ樹脂部が加熱されたものであると考えられます.


 発売から30年程度経過している車両の配線は全体的に被覆が硬化していて,

取り回しが鋭角になった部位においては破れて内部の銅線が露出していることも少なくありません.

またメインハーネスに見られる様に幹線は絶縁テープで巻かれているため,

容易に確認することもできないため非常に点検が難しいのが実際です.

したがって不具合が発生した場合は,他の機械的構造部位にもまして的確な故障診断能力が求められ,

メガスピードでは電装系の故障診断技術を向上すべく日々精進してまいります.





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