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コンミュテータのハイマイカとセルモータ回転時の異音について


【整備車両】

CBR250RJ (MC19)  推定年式1988年  参考走行距離:41,000km


【不具合の状態】

セルモータが回転している間にその周囲から異音が発生していました。


【点検結果】

セルスイッチを押し、セルモータが回転している間に異音が発生するということから、

セルモータ単体の不具合及びエンジンのワンウェイクラッチの不良ではないかと推測することができます。

セルモータは負荷がかかっている場合、

回転中に流れる電流不足により駆動トルクが十分でない時に異音を発生することがある為、

まず初めにセルモータに流れる電流の測定から開始しました。


図1 、セルモータに流れる直流電流の測定

図1はセルモータに十分な電流が流れているかを測定している様子です。

直流40A(アンペア)前後の電流が流れてエンジンをクランキングしていたので、

マグネットスイッチからセルモータまでの配線系統には異常がないと判断しました。



次にセルモータを取り外し単体で回転させたところ、

セルモータ単体でも異音を発生する事象がランダムに起きているので、

少なくともワンウェイクラッチを除くセルモータ単体で異常が発生していると考えられます。

その為セルモータを分解し内部を点検しました。


図2、ハイマイカになっているコンミュテータ

図2はマイカの上にブラシの削りかす等が堆積している様子です。

赤い四角で囲んだA部がセグメントとほぼ面一になっていて、B部の一部がハイマイカになっていることが分かります。

このことからブラシとセグメントの接触における何らかの不具合を起こしていた可能性があると判断することができます。

その他の箇所は点検の結果特に異常は見られませんでした。


【整備内容】

図3は絶縁体の堆積物を除去し、マイカのアンダカットの深さを適正に修正したコンミュテータの様子です


図3、堆積物を除去したコンミュテータ

各所導通検査、絶縁検査等を行いましたが、

ハイマイカ以外に目立つ損傷や異音の原因となる事象は見つかりませんでした。




図4、車体に取り付けられた分解整備の完了したセルモータ

図4は車体に取り付けられた整備の完了したセルモータの様子です。

セルモータに負荷をかけてエンジンをくランキングさせたところ、

セルモータの稼働時に発生していた異音が解消したことから、

ワンウェイクラッチは今回の事例の原因から除去することができます。

それと同時に消去的な見地から今回のセルモータの異音を発する原因となっていた事象のひとつに、

コンミュテータのハイマイカが考えられるという結果が得られました。


【考察】

この事例ではセルモータが回転している間に異音が発生していました。

セルモータを分解したところ、不具合という不具合は発見されず、

強いて言えばコンミュテータのセグメント間がハイマイカになっていたということでした。

その他の部分は点検測定しても特に異常が見られなかったことから、

消去的に異音の発生原因のひとつにハイマイカがあったのではないかと推測されます。

それ以外の部分は加工したり調整したりせずに組み直して車体に取り付けた為、

原因という原因を発見するに至りませんでした。

このことから今回の事例ではハイマイカが異音の発生に何らかの影響を及ぼしていたのではないかと推測されます。

理論的にハイマイカが異音の発生源になっているとは考えにくいといえますが、

結果からするとそれ以外の部分は一切変更を行っていない為、コンミュテータの詰まりが疑われます。

それを前提として考えると、ハイマイカによる絶縁不良というよりは、

ブラシとコンミュテータの接触パターンの不規則な変化が音となり外部に異音として現れていた可能性も否定できません。

いずれにしろセルモータはエンジンを始動させる為の最も重要な部品です。

特にキックのついていない中、大排気量のスクーターは押しがけができず、

セルモータの故障はエンジン始動不可能といった致命的な現象に確実に結び付きます。

やはりセルモータが動くとしても、異音が発生した場合はすみやかに点検整備、

必要に応じて分解整備されることが重要だといえます。





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