リヤホイールベアリングの破損における車体の振動について |
【修理車両】
GSX400R (GK71B) GSX-R Ⅰ型 1984年式 〈推定〉走行距離:約36,500km |
【不具合の症状】
70km/h以上の速度域で走行中にハンドルが左右にぶるぶる震える現象が起きていました。 |
【点検の結果判明した不具合の原因】
リヤホイールを取り外して点検したところ、ホイール右側のベアリングが図1の様に破損していました。 |
軸受球がなくなってしまっているのが分かります。
図2はベアリング内部の球受けが砕けてホイール内部に落下していた様子です。
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内部に粉状になったベアリングが確認出来ます。左側のベアリングは粉砕していないものの、動きがかなり渋くなっていました。 |
【整備内容】
ベアリングの破損状況からして再使用は不可能なので、砕けたものは新品に交換しました。
図3は新品のベアリングの外観です。金属はもとより、グリスの状態も良いので回転が非常にスムーズになっています。 |
同時に渋くなっていた左側のベアリングとハブベアリングも新品に交換しました。
アクスルやカラーに損傷等は見受けられず、そのまま再使用しました。
ベアリング交換後に走行したところ70km/h以上でも直進が安定し、
ハンドルが左右にぶるぶる振動するという症状がおさまりました。 |
【考察】
何故ベアリングがここまで大きく破損してしまったのでしょうか。
ベアリングそのものにひどい錆や腐食は見られないので、長期の放置が原因ではないと考えられます。
推定走行距離は36,500kmですが、年式を考えれば極めて多いというわけではありません。
通常の負荷での走行であればベアリングが急激に粉砕することは多くありません。
もし新車の状態から一度も交換されていなければ、使用や経年による劣化が著しい状態で多少ゴロゴロする感じがあっても、
さらに走行し続けた結果、この様な状態に至ったのかもしれません。
しかし定期点検をしていればここまでベアリングの状態が悪化する前に整備が行われていたと考えられます。
長期間、定期点検されなかった可能性も否定出来ません。
今後の対策としては、今回修理した年月日と走行距離を起点に定期点検ごとに状態を詳しく把握し、
場合によっては早めに新しいものへ交換しながら乗り続けられるのが良いと考えられます。
また、違和感を感じた場合は部品を破損させるまで車両に乗り続けると、
他の箇所にも負担がかかるので、その様な状態は極力避けなければなりません。
60km/h以上の速度域でハンドルが左右にぶるぶる振動する現象は様々な要因で発生します。
この事例では左右のリヤホイールベアリング及びハブベアリングを交換することで症状が改善しました。
左側のホイールベアリングの回転が渋くなっていたこともありますが、以前の整備記録もなく、
実際に右側のベアリングが大きく破損していたので、残りのベアリングにも応分の負担がかかっていたと推測出来ます。
ですので、リヤアクスルの軸受けとなっている3つのベアリングを同時に新品に交換しておきました。
この事例では、ベアリングが破損する前に定期点検整備を行っていれば症状を予防出来た可能性があります。
車検のある車両でも、車検に通すだけで法定定期点検の行われていない車両も少なくありません。
定期点検の重要性を改めて浮き彫りにした例だといえます。 |
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