【整備車両】
GSX-R1100 (GV73A) 年式:1991年 参考走行距離:約55,300 km |
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【不具合の状態】
パンク修理されたリヤタイヤが再びパンクしていました. |
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【点検結果】
この車両はリヤタイヤがパンクした為に応急処置を施して乗られていたということですが,いよいよ空気漏れが激しくなったということで,メガスピードにて整備を承ったものです.お客様からの情報により10か月前に新品にしたばかりのタイヤであり,走行距離は交換後2,500 km程度であるということが分かりました. |
図1.1 はパンク修理されたもののエア抜けが著しい為交換を余儀なくされたリヤタイヤの様子です.黄色の円で囲んだ部位は応急処置された箇所であり,内部にゴムがねじ込まれていることが分かります.パンクの原因は鋭い小石が突き刺さったということなので,砂利道を走行する際には十分注意する必要があることを再認識させられます. |
図1.2 泡の噴出しているタイヤとホイールの接触部 |
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図1.2 は早速タイヤを交換しようとビードを落としたところ,内部からムジュムジュと泡が噴出してきました.この状態は“いけない”可能性があると感じ,慎重に作業を進めました.するとタイヤの内側にかなりの量の泥水が溜まっていることが分かりました.“いけない”事例ばかりやっていると,“いけない”ニオイを察知できるようになるものです. |
図1.3 は内部に溜まっている泥水の様子です.これはさすがに“いけない”状態です.少なくとも10か月前に大手量販店で新品に交換されたものですから,その時は泥水はなかったはずです.すると10か月の間にこれだけの泥水が溜まったことになります.走行距離はタイヤ交換後2,500kmほどなので,それほど多いとは言えません.30年くらい雨ざらしで放置されたパンクして潰れているボロボロの当時もののタイヤを取り外したのならまだしも,この前取り換えたばかりのタイヤの中がこの様な状態に陥っているとは・・・
図の黄色の円で囲んだものはパンク修理の際にねじ込まれたと推測されるゴムですが,タイヤはホイールとかなりの機密を保っていることから,泥水が浸入できる部位はここしかないと言えますが,そもそも内部には250kPa程度の圧力があることから,エアが噴き出たとしても水が入り込む余地はないはずです.また,確かにコンプレッサの圧縮空気には水分が存在し,セパレータを使用しなければエアを入れるたびにわずかに水分も進入しますが,それはごく微量であり,何百回もエアを充てんしなければこの様な水たまりを形成することはできません.するとこの泥水はどこから侵入したのか,謎は深まるばかりです. |
図1.4 はパンクの応急処置が施されたタイヤ内側の様子です.今回のエア漏れもこの部位によるものと推測されます.走行することで傷が開き,徐々に内部のエアが漏れた可能性があります.しかしタイヤ内部は規定値で大気圧の2.5倍程度なので,傷が開いてエアが噴き出しても,水がここから侵入することは難しいと言えます.
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図1.5 ホイール全体に付着しているゴムの破片と薄膜 |
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図1.5 は泥水を除去してからホイールを取り外している様子です.これも“いけない”感じですが,ホイール全体に千切れたゴムが付着していました.またホイール全体がゴムの薄い膜に覆われていました. |
図1.6 ホイール全体に貼り付いているゴムのカスと薄膜 |
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図1.6 は取り外したホイールの様子です.全周に削れたようなゴムのカスとゴムの薄い膜が付着していました.泥水やパンク修理が影響しているのか,あるいはタイヤ交換時にホイールが一度も清掃されたことがないのかは分かりませんが,このゴミを除去しなければビードとリムの接触部からエア漏れが発生するおそれがあります. |
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【整備内容】
ホイールを洗浄すると同時にエアバルブおよびタイヤを新品に交換し,バランスを調整しました. |
図2.1 はゴムのカスを取り除き,薄膜を除去した様子です.全体的にツルツルになり,ビードとの接触面も問題ないレベルまで綺麗にしました. |
図2.2 新品のタイヤ及びエアバルブを取り付けたホイール |
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図2.2 は洗浄したホイールに新品のエアバルブを取り付け,リヤタイヤおよびバランスウエイトを取り付けた様子です. |
図2.3 は新品のリヤタイヤを車体に取り付けた様子です.これにより油冷の力強い加速を安心して楽しめるようになりました. |
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【考察】
ポイントはタイヤのパンク修理は暫定的であるという点に尽きます.四輪と違い二輪のタイヤはラウンド形状であり,センター以外は垂直荷重が周期的にかかる状態ではありません.したがって,例えばこの車両の場合はタイヤの空気圧が250kPaですが,その様な圧力が内部からかかれば応急処置した部位が変形したり歪んだりしてエアが漏れる場合があります.ですのでチューブレスタイヤに限ってはあくまでもパンク修理は応急処置であり,迅速に新品に交換する必要があります.
確かにタイヤ,しかもリヤタイヤを新品に交換したばかりで小石が刺さりパンクしたのではショックですが,やはりパンクしたのであれば新品交換はやむを得ません.砂利や小石はどこにでも存在し,まさにそれが刺さるかどうかは運によると言えますが,それでも可能な限り砂利道は避ける努力が必要です.が,刺さるときは刺さるのです.
今回の事例では,内部に泥水が溜まっていたり,ホイールに千切れたゴムの破片や膜が付着していたり,かなり内部が汚い状態でした.新品に交換されたばかりなのになぜこの様な事態に陥ってしまったのかは分かりませんが,パンク修理が影響していると考えるのが決してこじつけではないと言えるのは,メガスピードHPの熱心な読者の皆様であれば容易に理解できるはずです.
【追記】
その後お客様とのお話により,ゴム栓と併用して液体のパンク修理剤を使用されたということをお聞きしました.なるほど全ての謎が解けました.ホイールに付着していた薄いゴム膜とゴムのカス,そして泥水はすべてパンク修理剤だったのです.液体のパンク修理剤を使用するのは応急処置としてやむを得ません.しかし次のタイヤ交換時にこの様な状況に至ることを覚悟しておく必要があります.洗浄・清掃するのに非常に手間と時間がかかるからです.
ですが実際に自分のバイクのリヤタイヤが新品交換した直後にパンクしたら,やはり私としても修理で対応したくなってしまうかもしれません.180サイズですとタイヤ代も高価になります.しかしあくまでも応急処置であることを考えて,心を鬼にして早急に新品にしなければならないと改めて諭される事例となりました. |
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