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事例:S‐62

ステムベアリングダストシールの劣化により発生した亀裂について


【整備車両】

 RG250EW-4W (GJ21B) RG250Γ(ガンマ) 4型  推定年式:1986年  参考走行距離:約3,900km


【不具合の状態】

 走行における不具合は発生していないものの,部品が劣化している状態でした.


【点検結果】

 この車両はお客様のご依頼により数年置きっ放しになっていたものを,

エンジンも含めてメガスピードにて各所分解整備したものです.

ここではステムベアリング交換時に発見したダストシールの劣化について記載します.



図1.1 劣化しているステムベアリングダストシール

 図1.1は取り外したステムベアリングダストシール表面の様子です.

全体的に経年の劣化から発生したと見られる細かい亀裂が生じていました.



図1.2 上面及び側面に発生している亀裂

 図1.2は発生している亀裂を拡大した様子です.

側面に発生した亀裂は表面からつながっているものが多く,

これはシールの構成材料が表面と側面で一体化している為であると考えられます.



図1.3 ダストシール裏側

 図1.3はダストシールの裏側の様子です.

亀裂は表面及び内側にとどまっている為,裏側に目立つ損傷は確認できません.

したがって,直ちに外部からの雨風やゴミの侵入及び内部ステムベアリングのグリスの流出等の恐れはないものの,

表面の亀裂は進行している為,何らかの対策が必要であるといえます.



【整備内容】

 整備時点において部品供給があることから,亀裂の発生しているものを再使用することはせず,

新品に交換する段取りになりました.




図2.1 改良されている新品のダストシール

 図2.1は新品のダストシールの様子です.

品番統一で当時の部品と形状が異なることが分かります.

新品のシールはリップ部が大幅に張り出していることから,

ゴミ等の侵入を防ぐ能力が大幅に向上していると考えることができます.



図2.2 新品のダストシール裏側

 図2.2は新品のダストシールの裏側の様子です.

リップ部が大きく張り出していること以外には,外観上に大きな変更点はないと見ることができます.



図2.3 車体に取り付けられた新品のステムベアリング

 図2.3は車体に取り付けられた新品のアッパステムベアリングの様子です.

やはり整備された部位に関してはシールも新品に交換しておきたいものです.



図2.4 ステムベアリングに取り付けられた新品のダストシール

 図2.4はステムベアリングに新品のダストシールを取り付けた様子です.

リップが大幅に拡大されたことにより,ネックを確実に覆っていることが分かります.

これにより雨風やゴミの侵入を防ぐとともに,ベアリングのグリスの飛散を防止する性能も増したと考えることができます.



【考察】

 今回の整備ではステアリングステムベアリングの交換を実施しました.

その際に点検したダストシールには劣化によると見られる複数の亀裂が確認されました.

確かに亀裂は表面及び内部にとどまっている為,

今すぐ車両の走行性能に影響することはないと考えても誤りではありません.

しかし劣化が進み,いづれは不具合の原因に結び付くことは目に見えている為,

今回の整備ではベアリング交換とあわせてダストシールも一緒に新品に交換しました.

ステムベアリングを交換する為にはフロントホイールやフロントフォーク等のフロント廻りをすべて取り外す必要があり,

コスト的にフロント廻りでは一番大変な部位に該当します.

したがって,ベアリング交換の為に周囲が分解されているのであれば,

同時にシールの交換も実施されるべきであるといえます.

なるほどシールが破損するまで使うとすれば,実際にはまだまだ使用可能ですが,

少なくとも発売が1986年頃であることを考えれば,

明らかに劣化していると目視確認で分かっている部品を再使用するという選択肢は極めてナンセンスです.

シール類は必ず劣化する為,例えばこのステムベアリングダストシールに関していうのであれば,

ベアリング交換時期は同時にシール交換時期でもあるといえ,包括的に分解整備される必要があり,

新品になったベアリングを保護する為にも,やはり新品のシールが望ましいといえます.





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