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事例:S-93

近い将来不具合が発生する可能性のあるスピードメーターケーブルについて

【整備車両】 
 R1-Z (3XC) 3XC1  推定年式:1991年  参考走行距離:約15,200 km
【不具合の状態】 
 スピードメーターケーブルの被覆が破れていたり,ホイール側に損傷が見られました.
【点検結果】 
 この車両はメガスピードで不具合の整備を承る直前に他店で整備されたものですが,リザーバタンクに全く冷却水が入っていなかったり,各部に不具合が見られた為,当社で整備し直したものです.今回の事例では損傷していたスピードメーターケーブルについて記載します.

図1.1 油汚れが見られ,外側に曲がっているケーブル
 図1.1はフロントホイール側のスピードメーターケーブルの差し込み部の様子です.ケーブルが付け根の金属部から樹脂被覆になった部位で外側に曲がっていることが分かります.
 車両の吹け上がりに異常回転域があるというお客様からの情報を共有する為に試運転を行った際には,スピードメーターは動いていました.しかし通常はケーブルの形状はストレートなので,曲がっていることは異常であり,何らかの不具合が近いうちに発生することが予測されます.また油に泥が付着して表面に堆積していることから,ケーブルはかなりの期間使用されていたことや,その間清掃されていないことが推測されます.

図1.2 被覆の損傷しているケーブル
 図1.2はケーブルの被覆が損傷している様子です.内部の金属が露出して錆びています.この状態が一か所でも発見された場合は,ケーブル内部も同様であると考え,すみやかに新品に交換しておくことが望ましいと言えます.

図1.3 破損しているケーブル端部
 図1.3はフロントホイール側のケーブル端部の様子です.金属部と樹脂部の間に亀裂が入り,外側に曲がってしまったことにより,内部のケーブルが被覆内部側面と接触していて,指で回すとかなりの抵抗を感じます.この様な状態で無理に使用し続ければ,スピードメーターケーブル軸がほつれた ※1 事例の様にケーブル軸が損傷するおそれがあり,そうでなければホイール側とメーター側のケーブル軸接続部に過大な負荷がかかり,破損の原因になります.図1.1の様に車体に接続された状態では一見分かりづらいと言えますが,実際に取り外せば損傷具合が良く理解できます.


【整備内容】
 車両を走行している間に不具合は発生していませんでしたが,ケーブルが損傷していて近いうちに不具合が出る可能性が否定できない為,新品に交換しました.

図2.1 ホイール側の新品のスピードメーターケーブル端部
 図2.1はホイール側の新品のスピードメーターケーブル端部の様子です.図1.3と比較すれば一目瞭然ですが,新品はこの様にストレート形状であり,取り外したものがいかに曲がっていたかが分かります.

図2.2 フロントホイール側に取り付けられたスピードメーターケーブル
 図2.2は新品のスピードメーターケーブルを車体に取り付けた様子です.図1.1と比べると,外側に曲がることなくスムーズに弧を描いてメーターまで伸びていることが分かります.

図2.3 メーターに取り付けられたスピードメーターケーブル
 図2.3はメーターに取り付けられた新品のスピードメーターケーブルの様子です.取り外したケーブルにはありませんでしたが,新品には接続部を保護する防塵・防水を兼ねたゴム被覆が付属しています.これによりスピードメーターが今後長い期間正常に動作する為の1つの大きな要素を得ることができました.


【考察】 
 スピードメーターケーブルは走行するたびに被覆内部でかなりの回転速度で軸が回り続けています.それが曲げられながらメーターまで伸びている為,やはり走行距離に応じて消耗します.特に金属部と樹脂部の接続部が損傷していることが少なくありません.したがって,ケーブルは消耗品の1つと考えなければならず,1箇所でも被覆が破れて内部が露出していたりする部位があれば,他の部分も同様に消耗していると考え,早めに交換しておくことが大切です.
 ケーブル式スピードメーターの不具合はいきなりは発生せず,メーターの針が躍り始めると言った小さな症状から進むことが多い為,急に速度が分からなくなる事態にはなりにくいといえます.しかし保安基準では速度計は必須であり,それを正確に表示する為にも,定期的なケーブルの点検整備が大切です.


※1 スピードメータワイヤのほつれによるスピードメータの動作不良について





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