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事例:S-125

潤滑不良によるシフトペダルリンク部からの異音について

【整備車両】 
 GSX1300RY (GW71A) "HAYABUSA" 隼 ハヤブサ  年式:2000年  参考走行距離:約26,500 km
【不具合の状態】 
 シフトペダル踏み込み時および戻り時にわずかにキーキーという異音が発生していました.
【点検結果】 
 この車両は社外のバックステップが取り付けられていますが,そのシフトペダルを踏んだ時と戻りの時に異音が発生するということでメガスピードにて整備を実施したものです.異音はキーキーという高い音で潤滑不良時に良くなる様な音でした.したがって細かくシフトペダルが動くリンク部を点検すると,わずかに錆の発生している部位が確認できました.

図1.1 薄い錆の発生しているシフトペダルリンク部
 図1.1 は錆の発生しているシフトペダルリンク部の様子です.黄色の楕円で囲んだ矢印で示したベアリングに薄く錆が発生していました.周囲もグリス切れの感じがしている為,潤滑不良が異音の発生原因であると判断しました.


【整備内容】
 各シフトリンク部の錆を除去し,潤滑剤を塗布し周囲を洗浄しました.

図2.1 錆取り潤滑されたシフトペダルリンク部
 図2.1 は錆を除去し,グリスアップしたシフトペダルリンク部の様子です.潤滑すると同時に異音の発生源となる錆を除去しました.またフートレスト側にも同じベアリングがある為,同様に整備しました.

図2.3 異音の解消したシフトペダル
 図2.3 はシフトペダルに発生していた異音が解消したか点検している様子です.ゆっくりした動作,素早い動作等色々な条件下でも異音が解消したことを確認して整備を完了しました.

図2.4 ベアリングへの潤滑ニップル
 図2.4 はベアリングハウジング下部に付いている潤滑剤給油の為のワンウェイニップルの様子です.もちろん外側から潤滑剤を塗布してもベアリングの厚みがそれほどない為全体的に行き渡りますが,ニップルを利用して内側から潤滑剤を圧入すれば,完全にハウジングとベアリングの隙間が潤滑されます.したがって,やはり正確に整備するのであれば,ニップルから給油しなければなりません.


【考察】 
 シフトペダルリンク部は運転するたびに絶対に動かされる場所であり,滑らかである必要があります.今回の事例ではキーキーという異音が発生していましたが,実際の操作は足で行う為,異音の原因となるわずかな接触抵抗を感じ取ることはできません.したがって異音が発生して初めて潤滑不良に気付くことになります.もっともそのまま走行し続けても相当な距離を走らなければまず影響はないと言えますが,操作するたびにキーキー言うのでは,楽しいライディングもスポイルされてしまいます.

 この事例でも錆は外から見えるベアリングの表面に薄らとあるだけで,ほとんど無いに等しいレベルでした.しかし音が発生するということは,内部では金属同士が擦れていることを示している為,やはり適切に対処しなければなりません.このベアリングはニップルが付いていたので内側から十分に給油することができました.仮にニップルが無いタイプでも,外からグリスアップするだけで適切な潤滑が得られるケースが多いと言えます.

 この車両は継続検査(車検)がありますが,やはりその際の定期点検時には各操作機構のベアリングを良く見ておく必要があります.そして検査は2年に1回ですから,検査切れ間近の車両は潤滑不良に陥っている可能性もある為,定期的に給油しておくことが大切です.







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