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事例:S-71

極度に錆びたリヤサスペンションプリロードアジャスタ取り付けスクリュの交換と美化効果について


【整備車両】

 RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型  年式:1987年  実走行距離:約1,200km


【不具合の状態】

 リヤサスペンションプリロードアジャスタの取り付けスクリュが極度に錆びて固着していました.


【点検結果】

 この車両はお客様が10年程度の長期保管されている間に始動不能に陥ったものですが,

各部を点検した結果,エンジン始動以外にも様々な不具合が見つかりました.

今回の事例では,車体廻りを目視点検した際に気になった,

リヤサスペンションプリロードアジャスタの極端に錆びたスクリュについて記載します.



図1.1 極度に錆の発生しているアジャスタ取り付けスクリュの頭

 図1.1はリヤサスペンションプリロードアジャスタの取り付けスクリュの様子です.

この車両はワンオーナーであることからスクリュは当時のままであるということが確実であり,

車両の発売が1986年頃ということを考慮すれば錆が発生していても無理はありません.

もちろん性能には全く影響がないと言っても良い部位ですが,その他の不具合を包括的に整備してリフレッシュしている為,

この部分だけ錆が残ってしまうと非常に汚い点として残ってしまいます.

ここで私が“汚い”と表現したのは,錆に対する極度の嫌悪だけでなく,

見た目の見苦しさや“放置感”あるいは“ヤレ・ヨレ感”を含めた,

トータルとしてのマイナスの概念を含みます.

したがって,例え機能には影響がなくても,私の視点から見れば,

それは絶対的に是正されなければならない重要なポイントとなるわけです.



図1,2 錆びているスクリュ及びシートワッシャ,ロックワッシャ

 図1.2は上側のスクリュの近影です.

スクリュだけでなく,ロックワッシャやシートワッシャも著しく錆びており,非常に汚らしくなっていて,

取り付けプレートもほこり等で汚れていることが分かります.



図1,3 取り外したスクリュワッシャASSY

 図1.3は取り外したスクリュワッシャASSYの様子です.

この部品は新車で使用されている状態では,スクリュとロックワッシャそしてシートワッシャがASSYのセットになっています.

それぞれが締め付け状態において接触している部位はほとんど錆びていないことが分かります.

また取り外しの際に強固に固着していた割にはねじ溝には錆が発生しておらず,

取り付け部そのものの状態は比較的良好であるといえます.



図1,4 アジャスタ取り付けブラケット

 図1.4はアジャスタ及びアジャスタを設置するブラケットの様子です.

アジャスタ側の雌ねじには破損がなく,ブラケットには汚れは見られるものの,大きな不具合等は確認できませんでした.



【整備内容】

 錆びているスクリュワッシャを新品に交換することにより外観の美化を図りました.



図2.1 新品スクリュ,ロックワッシャ,シートワッシャ

 図2.1は新品のスクリュ及びロックワッシャ,シートワッシャの様子です.

スクリュはブラケットに合わせて黒色になっています.

補給部品ではそれぞれが単体の設定になっているためASSYでの取り扱いはありません.

確かに部品管理や作業性ではASSYの方が有利ですが,

この部位は日常的にまず脱着の行われるものではないので,そうでなくても十分に役目を果たせるといえます.



図2.2 美しく蘇ったリヤサスペンションプリロードアジャスタ取り付け部

 図2.2は清掃したブラケットに新品のスクリュを取り付けた様子です.

非常に見た目が美しくなり,車両を動産としての“資産”と捉えた場合でも,十分に価値の向上が図られたといえます.

やはり各部整備された車両であれば,一部だけ極度に錆びているのは非常に見苦しく,

もし私がお客様の立場であれば,それは嫌です.

自分の車両に錆があるのは絶対に嫌ですし,見逃すことはできません.

したがって,もちろん,お客様のご要望をお聞きしてからの判断になりますが,

可能な限りお客様の車両も自分の車両と同じくらい美しいものにしたいというのが常であり,

予算や条件の許す範囲内で,できるだけ気持ち良く納車できるよう配慮しなければならないと考えております



【考察】

 たかだか“ねじの2本”ということで侮るわけにはいきません.

スクリュとロックワッシャ及びシートワッシャという合計でわずか数百円の投資をすることにより,

車両の見た目のイメージがこの様に極端にガラッと変化するのです.

特に古い車両において,確かに不具合を整備することはリフレッシュを図る上で避けては通れない道ですが,

この事例の様に,要所要所で美化することにより,

機能の改善だけでは推し量れない,いわゆる“見た目”の美しさの再生により,

車両価値が別物へと変化する可能性を秘めていることは,決して忘れてはならない重要なポイントであり,

所有する車両が美しくなれば,それが満足度に大いに影響してくるといっても,異論はありません.





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