事例:S‐74
ヘッドライトカバー固定スクリュの脱落と取り付け部に発生している亀裂について |
【整備車両】
GSX-R1100J (GU74A) 年式:1988年 参考走行距離:約18,700km |
【不具合の状態】
ヘッドライトカバー固定スクリュが一か所脱落しており,カバー取り付け部に亀裂が発生していました. |
【点検結果】
この車両は各部整備のご依頼を承りメガスピードにて実施したものです.
ここではヘッドライトカバーの取り付け不良及び亀裂について記載します
図1.1 取り付け部の割れているヘッドライトカバー |
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図1.1はヘッドライト廻りの様子です.
アッパーカウルの状態は良いものの,ヘッドライトカバーにヒビが入っていたり,
黒丸Aで示した部位の固定スクリュが脱落していることにより,
その潜在的な美しさが台無しになっている態でした.
図1.2は亀裂の入っていたカバーを取り外した様子です.
上下の取り付け穴に発生している亀裂と左右のそれとは質が異なることが分かります.
図1.3はカバーの取り付け部のうち,上部と下部に発生している亀裂の様子です.
ともにカバー内側に亀裂が進行しています.
取り付け時にスクリュの締め過ぎにより一気に発生した可能性を否定することはできませんが,
常識的な作業が行われたとする前提があれば,きっかけとなった亀裂が走行による振動や圧縮,引っ張り等の外力で,
徐々に進行したと考えるのが自然です.
しかし対象材料の強度や性質を見込まず極端に強く締め付けた場合にも同様に落雷の様に亀裂が走るため,
2輪は特に,全く締め付けトルクを無視したような素人整備されている車両が少なくないことを考慮すれば,
その原因を特定することは難しいといえます.
図1.4は左右の取り付け部に発生した亀裂の様子です.
取り付け穴の周方向に多数の亀裂が発生していますが,そのどれもが表面上で留まっていることが確認できます.
右側の穴の左下に発生している黒い擦り傷は,スクリュを回転させた時に接触した際に発生したものであると考えられます.
これはスクリュがカウルに対して垂直に取り付けられるのに対し,カバーが湾曲しているため,
スクリュとの接触部に角度が生じ,その部分に圧力が集中することによるものです. |
【整備内容】
ヘッドライトカバーを新品に交換し,座面を傷つけないためにスクリュの取り付けは樹脂ワッシャを介して行いました.
図2.1は新品のヘッドライトカバーの様子です.
新品ですから曇りや取り付け部の破損がないのは当然ですが,
取り外したものと比較するとその美しさに“ハッ”とさせられます.
図2.2は新品のスクリュ及び樹脂製のワッシャの様子です.
いわゆるデフォルトの状態ではスクリュが直接カバーを締め付ける様になっていますが,
それではスクリュの回転時に座面とカバーが擦れてしまい,破損の大きな原因になります.
したがって,今回の整備では,樹脂製の柔軟性に富んだワッシャを使用することにより,
スクリュの締め付け時の影響を受けないようにしました.
図2.3 新品のヘッドライトカバーを装着したヘッドライト廻り |
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図2.3はヘッドライトカバーステーに新品のヘッドライトカバーを取り付けた様子です.
カバーが新品になったことにより周囲の印象が変わり,全体的に引き締まった感じになりました.
そして新品に交換されたカバーがアッパーカウルの艶を更に引き立てるように作用し,
新車を彷彿とさせる美しい外観を取り戻すことができました. |
【考察】
カウルの中でも特に透明の部位であるスクリーンやヘッドライトカバーといった透明の部分は,
それが曇っていたり破損していたりすると,いくらその他の部位が美しくても,
全体的な印象としての質の低下は避けれられません.
しかし逆にそれらが新品に交換された場合,驚くほど外観が美しくなり,引き締まって見えるのは疑いようのない事実です.
したがって,特に年数の経過した中古車であれば,スクリーンや透明の樹脂部品を新品に交換することは,
外観を整えるという視点で見た場合に最も効果があるリフレッシュ法であるといえ,
費用以上の所有する満足度が得られることは数々の事例より明らかであり,非常に有効であるといえます. |
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