【考察】
倒立式のフロントフォークの場合,ダストシールを交換する為にはアウターチューブを外さなければならず,フォークを分解する必要があることから,正立式のそれに比べてダストシールだけ交換されてぱっと見では外観だけ良くなっているといった誤魔化しができません.したがってダストシールに亀裂が発生している状態は,確実に数年経過していると考えるのが自然であり,その場合は当然フォーク内部の状態も同様である可能性が高いと読む必要があります.というのも,正立式の様にトップキャップだけ取り外して内部のオイルを交換するという方法は,倒立式の場合には構造上出来ない場合が少なくない為,倒立式のフォークは正立式と比較して手入れがされていないケースが多いのが現状です.
今回の事例でもダストシールに亀裂が入っていた為,内部の状態も同様であると推測して分解整備しました.フォーク上部のいわば上澄み部分のオイルは比較的きれいでしたが,やはり底部のオイルは汚れが著しい為,オリフィスやバルブをオイルが正確に往来することができなくなり,それはフィーリングに直接影響を及ぼします.やはりダストシールがダメになってきている場合は包括的な内部の整備が必要になり,特に1300ccという大きな排気量を支える足廻りであれば,尚更気を配る必要があるといえます.
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