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事例:S‐10

雌ねじのねじ山破損によるシートカウルの取り付け不良について


【整備車両】

NSR250RG (MC16)  推定:1987年式  走行距離:17,900km


【不具合の症状】

シートカウル左側の取り付けねじが完全に締まり切らない状態でした。


【点検結果】

図1はカウルを取り外した状態で、雄ねじがどこまで締まるか点検した様子です。



図1 、ねじ山部分が完全に入り切らない留めねじ

まだかなり雄ねじの山が残っている状態ですが、これ以上は硬くなり締め込むことができませんでした。




図2 、奥側の崩れたねじ山

図2はねじ山の崩れた雌ねじの様子です。

奥側が破損していました。雄ねじは奥側の破損した部分で止まっていたものと考えられます。


【整備内容】

図3は破損した雌ねじをタップで修正している様子です。


図3、タップによる雌ねじのねじ山の修正

雌ねじの素材は鉄だったので、タップでの溝修正のみで十分な締め付け強度を得ることができました。




図4、ダイスによる雄ねじのねじ山の修正

図4はダイスで雄ねじの溝を修正している様子です。

雄ねじのねじ山は目視ではほとんど崩れていませんでしたが、確認の為にもダイスを使用しました。



図5は溝を修正した雌ねじと雄ねじが指でねじ込む程度の力でスムーズに取り付けられるか点検している様子です。


図5、ねじ溝部がスムーズに完全にねじ込まれた雄ねじ

図1との比較でも明らかなように、雄ねじはねじ山がなくなる部分まで指の軽い力でねじ込むことが可能になりました。




図6、シートカウルを取り付けた雄ねじ

図6はシートカウルを取り付け、雄ねじを雌ねじに取り付けた様子です。

雄ねじがねじ山のストッパ部分までスムーズにねじ込まれ、取り付けに十分なトルクで締め付けられ、

その状態でシートカウルがストッパによりわずかなクリアランスで干渉していないことを確認しました。


【考察】

カウルを固定する雄ねじは直接カウルの表面に接触して締め付けるタイプと、

雄ねじにストッパがついていてカウルに直接接触しないタイプがあります。

ストッパがついているものでも、破損しやすいものを締め付ける場合はその機能を過信せずに、

取り付けには十分注意しなければならないといえます。



雌ねじのねじ山の修正はタップを立てることが基本ですが、

溝がアルミ合金である場合はヘリサート加工しなければならない場合があります。

この事例では溝が鉄なので強度があり、タップ修正のみでも締め付けに耐える十分な強度を得ることができました。



雌ねじのねじ山が崩れている部分に入っている雄ねじは、

雌ねじと同じ様な素材の場合は取り外すとねじ山が崩れていることが少なくありません。

やはり雄ねじ、雌ねじはセットで修正しておくことが求められます。





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