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事例:S-118

コーションラベルが無いことによる違和感について

【整備車両】 
 GSX1300RY (GW71A) "HAYABUSA" 隼 (ハヤブサ) 年式:2000年 参考走行距離:約26,500 km
【不具合の状態】 
 ステアリングのコーションラベルが無い状態でした.
【点検結果】 
 この車両は本来あるべきではないかとされるステアリングのコーションラベルが無いということで,メガスピードにて確認・整備を実施したものです.

図1.1 コーションラベルの無いアッパーカウル右側インナー
 図1.1 はコーションラベルが貼り付けられていはず,とされるアッパーカウル右側インナーの様子です.この車両の型式はY型のカナダ仕様ですが,なるほどパーツリストを見るとステアリングのコーションラベルが品番として存在するので,新車では取り付けられていた可能性があります.また多くの同型の他車を見ても,ラベルの取り付けられている割合が高いことが分かります.


【整備内容】
 新品のステアリングコーションラベルを取り寄せ貼り付けました.


図2.1 新品のステアリングコーションラベル
 図2.1 は新品のステアリングコーションラベルの様子です.経年により劣化している車両はこのラベルを貼り直すだけでも非常に見た目が美しく甦ります.

図2.2 コーションラベルの貼り付けられたアッパーカウル右側インナー
 図2.2 は新品のコーションラベルを貼り付けたアッパーカウル右側インナーの様子です.黄色の楕円で囲んだものが新品のラベルです.このラベルがあるのとないのでは実際の印象がガラリと大きく変わります.もちろんこのラベルがあることが本当にストックの状態かどうかは分かりませんが,少なくとも同じカナダ仕様のK2型では存在することから,Y型に存在しても不思議ではなく,むしろ無い方がノッペリとした感じになり違和感をおぼえます.最終的には好みの問題になりますが,私は個人的にコーションラベルが好きなので,“あるべきはず”とされる部位に無ければ新規に貼り付ける立場を取ります.

図2.3 別角度から見たステアリングコーションラベル
 図2.3 は図2.2 とは別の角度から見たステアリングのコーションラベルの様子です.ラベルがあることによりノッペリとしていた周囲が引き締まった印象になります.


【考察】 
 少なくとも量産の市販車に限って言うのであれば二輪(バイク)の外装が四輪(車)と大きく違う点のひとつにステッカーやラベルの有無があります.車はほとんど単色あるいはツートンで全体が塗装されているのに対し,バイクはタンクを始めデカールやラベル等が各部に貼られ,全体的に鮮やかな外観になっています.したがって,バイクを単色に全塗装してしまった場合,それで終わりにされた車両は全体がノッペラボウの様な印象を受け,どこかしら違和感をおぼえるのはこの為です.それはインナーカウルやスイングアーム等に貼られているコーションラベルについても言えます.単に部品交換しただけで終わりにされた場合,部品にはデカールやラベルがない状態で入荷することが多い為,本来その様なデザインがある部位に関してはやはりノッペラボウの様な印象になり,どこかしら不自然な感覚に陥ります.

 実際にやってみたことのある方であれば容易に理解できるはずですが,メーカー純正の外装を自分好みにしようと変更してみると,どことなく小学生の工作のような出来になったり,下品な感じになったりするといった経験を持つ方も少なくないと思います.それは調和されている状態を基準として,そこからのわずかなバランスのズレや狂いを見抜く能力が人間には備わっているからです.もちろんオーナーの自己満足が一番大事なことですが,やはりメーカーのデザイナーはプロですから,最低限市販にあたりゴーサインの出たそのデザインは良くできています.したがって,何でもかんでもカスタムと称して変更するのではなく,一旦ベース状態に復元してそれを咀嚼し,その上でどうするかを検討してみるのも1つの手です.そしてこれまでに述べた“違和感”を高い次元で超えるには,最低でもデザインの基礎を学ばなければ無理だな,という結論に否応なしにたどり着くことになります.

 しかし,それでも自分好みに外装を気軽に変えてみたりできるところがバイクの良いところかもしれません.同じことを車でやろうとすると,恥ずかしくて乗れないような感じになり,取り返しのつかないことになりかねないからです.これはバイクと車の社会的な位置づけの違いによるものであり,外装が部分ごとに取り換えられるバイクと,一体化している車の構造的な差異によるものであると言えます.







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