トップページ故障や不具合の修理事例【二輪自動車】 エンジン関係の故障、不具合、修理、整備の事例 (事例:271~280)


事例:E-280

社外のキャブジェットキットの使用による燃調の狂いと吹け上がり不良について

【整備車両】 
 XT225 SEROW(セロー) (1kH) 2LN0  推定年式:1987年  参考走行距離:54,000 km
【不具合の状態】 
 スロットルON時の息つきがあったり、アイドリングが不安定だったりする状態でした。
【点検結果】 
 今回の事例はお客様からのご依頼により、 ”スロットルON時の息つきがあったり、アイドリングが不安定だったりする” ということで、メガスピードにて整備を承ったものです。まずは問診の結果から、エンジンの3大要素である”良い火花”、”良い混合気”、”良い圧縮”から点検することにしました。

図1.1 エンジンの圧縮圧力測定
 図1.1 はエンジンの根幹である燃焼室の密封状態を測定した様子です。54,000kmと走行距離は多いものの、1,200 [kPa] と規定値通りの数値を示していた為、エンジン本体の少なくとも動力発生部に関しては問題ないと判断しました。

図1.2 真っ黒くしめっているプラグ
 図1.2 は圧縮測定時に取り外したプラグの様子です。お客様から車両をお預かりする際にアイドリングからスロットルON時の不調は再現・共有していた為、原因は不完全燃焼によるプラグのカブリによるものだと推測されます。そしてプラグがカブル原因を探し出す必要があり、更に先に進みました。

図1.3 不具合の発生している可能性があるキャブレター
 図1.3 は不具合の発生している可能性のあるキャブレターの様子です。ダイヤフラムの異常など症状からいくつか原因の恐れを推測し、確認することにしました。赤の四角で囲んだ部分は樹脂ですが、過去に破損したようで修復が見られました。

図1.4 純正新品と社外品とのジェットニードルの比較
 図1.4 は純正新品のジェットニードルと取り付けられていた社外のジェットニードルを比較した様子です。
”A”の左のジェットニードルが純正で、”B”の右のジェットニードルが社外のキャブジェットキットに入っていたジェットニードルです。不具合の対処としてキット品を使用されたケースですが、商品の説明に純正互換あるいは純正相当とあっても、これほど形状に差がある製品も存在します。基準の形状に対してここまで細いと、ガボガボいって全く吹け上がらなくなります。
 また、メインジェットは社外のキャブジェットキットの方が番手が大きいことも分かりました。これも燃調不良の原因のひとつであると言えます。


【整備内容】
 燃料系統を確実におさえておくため、キャブレターを取り外して完全に洗浄しました。また数十年経過しているCDIも同時に新品に交換しました。

図2.1 洗浄されたキャブレターボデーおよびフロートチャンバ
 図2.1 はキャブレターボデーとフロートチャンバを可能な限り洗浄し、各部機能の再生やポート内部の詰まり除去だけでなく、ケースのアルミニウム本来の美しさを取り戻した様子です。

図2.2 新品のダイヤフラムと新品のカバー
 図2.2 は補修してあったダイヤフラムカバーを新品にするとともに、ダイヤフラム本体も新品に交換した様子です。

図2.3 新品のダイヤフラムASSYと周辺部品
 図2.3 は経年劣化で硬化していたダイヤフラムを新品に交換した様子です。ジェットニードルも純正新品に戻すことにより万全を期しました。

図2.4 オーバーホールの完了したキャブレター
 図2.4 はオーバーホール(分解洗浄・精密検査・再組立)の完了したキャブレターの様子です。

図2.5 車体に取り付けられた整備済みのキャブレター
 図2.5 はオーバーホールしたキャブレターをエンジンに取り付けた様子です。

図2.6 新品のCDIユニットの取り付け
 図2.6 は新品のCDIユニットを取り付けた様子です。すでに30年程度経過しているCDIをリフレッシュして点火系統の不具合に備えました。

図2.7 試運転を実施し、良好と判断した車体
 図2.7 は整備を完了し、試運転を実施したセローの様子です。吹け上がりも良く、楽しく乗れる状態に再生しました。

図2.8 キツネ色の理想的な焼け具合を示しているスパークプラグ
 図2.8 は試運転後に取り外したスパークプラグの様子です。理想的な焼け具合を示していて、これは快調な走りとリンクします。修理前の図1.2 の真っ黒のプラグが嘘の様です。それほど爽やかな焼け具合になりました。


【考察】
 社外のキャブジェットキットは国内大手から輸入品まで様々な種類があります。おそらく使えるものも存在すると思いますが、この事例の様に”純正互換・純正相当”とされる製品でもどこかが純正と異なっていて、それが不具合の原因になるという本末転倒な結果に陥る事例が少なくありません。今回の事例では”セロー用”とされる社外のキットが使用されていましたが、ジェットニードルが純正に比べてかなり細く、またメインジェットの番手が大きいという差異がありました。これはダブルパンチで燃料を加濃にしています。過ぎたるは及ばざるがごとし、いくら燃料を入れてもきちんと燃焼しなければパワーが出ません。それどころか吹け上がりが悪くなりアイドリングも不安定になります。

 社外キャブジェットキットでは、今回の様に純正対応とされる製品でも形状が異なったり、メインジェットのねじピッチが違い取り付けられないということも経験しているので、
メガスピードでは社外キャブジェットキットの取り付けは一切実施しておりません。純正が一番です。セッティングを変更するとしても、純正品またはOEM製品で対応するのが結局のところ、一番確実で早いという結論に落ち着きます。

 この車両はワンオーナーで、新車から愛着をもって乗られているものでした。納車時に調子が良くなったと喜んでいただけたので、私も嬉しい気持ちになりました。きっとこれからもワンオーナーであり続けるであろうお客様の新たな節目・出発点となれば幸いです。





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