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事例:E-202

メインジェットシートおよびニードルジェットホルダ取付部に付着した堆積物について

【整備車両】 
 RG400EW-2W (HK31A) RG400Γ(ガンマ) 2型  年式:1987年  参考走行距離:約23,500km
【不具合の状態】 
 吹け上がりが悪く,走行中に1番と3番サイレンサから黒くなったオイルが噴き出す状態でした.
【点検結果】 
 この車両は他店で購入された直後にメガスピードにて不具合の修理を承ったものです.先方でキャブレータのオーバーホールを実施したということですが,状況や主要部の点検結果から不十分であると判断し,当社で細部までオーバーホール【overhaul】(分解整備・精密検査)し直しました.
 今回の事例ではキャブレータ内部のメインジェットシートおよびニードルジェットホルダ取付部に確認した,ガソリンが固形化したと推測される付着物について記載します.

図1.1 キャブレータ内部に付着した腐敗したガソリンの固形物
 図1.1はメインジェットシートとニードルジェットホルダ取付部に付着物を確認した様子です.矢印で示した部位がシート取付部であり,比較的乾燥した固形物がこびり付いています.楕円で囲んだ部分はニードルジェットホルダが挿入される部位に付着した固形物の様子です.他店でオーバーホールされたというものですが,部品を外すとその下にこのような細かなゴミが各部に付着していた為,当社でオーバーホールし直しました.一般の方はオーバーホールという語句に対して漠然としたイメージしか浮かばないのも無理はありませんが,現実には一言でオーバーホールといっても,その質や出来栄えは実際に作業を実施した人の技量により大きく左右されます.
 この図から読み取るべき一番大切なことは,楕円で囲んだ部分の付着物は,長年流動しないガソリンにつけておかないと形成されないものであるということです.つまり,キャブレータが途中で交換されていないという前提において過去に数年間エンジンが動かされなかった経緯が確実に存在していたということが推測されます.発売が1987年であることを考えれば,現在までに様々な状況を経ていることは確かですが,このような状態を確認した場合は,キャブレータだけでなく,ブレーキ等固着しがちな部位も包括的に点検しておく必要があると言えます.


【整備内容】
 点検の為に部品を外して初めて,その下に除去されていない堆積物が存在していることに気づきます.つまりゴミの上に部品が設置され潰されていたということです.知らなければそれで済んだものですが,これを見てしまったら気分が悪くなるのは無理もありません.したがって,気分を良くする為にも,メガスピードにて可能な限り清掃・洗浄・そして取り切れない部分に関しては研磨を実施しました.

図2.1 堆積物の除去されたジェットシート取付部
 図2.1は清掃・洗浄し,表面を研磨したメインジェットシートおよびニードルジェットホルダ取付部の様子です.可能な限り堆積物等を除去し,表面の状態を美しく仕上げました.ジェットシート取付部に光沢が蘇っていることが確認できます.

図2.3 設置された新品のメインジェットシートおよびメインジェット
 図2.3は下地の整えられたシート設置部に,ニードルジェットホルダとシート,そしてメインジェットを取り付けた様子です.新品に交換した為,部品そのものが金色に光っていますが,それに対応する形で磨かれたキャブレータの銀色が映えています.
画像では暗く見えますが,手前のスタータパイプも同様に金色に輝いています
※1


【考察】 
 性能だけ考えるのであれば,この堆積物はそのままにしても,ほぼ影響ないレベルであると言っても問題ない程度の大きさです.部品に挟まれて潰れてしまうので,各ポートへのダメージも無視することができる程度のものです.見なかったことにして組んでしまえば,次に分解するまで誰も分かりません.次に分解したとしても,その部分に気づかないかもしれません.あるいは気づいたとしても,見ないふりをするかもしれません.他人のことなど誰にも分からないのです.そして分かるのは自分のしたことだけです.細部までやったかどうか,自分が納得できる部分までできたかどうか,限られた条件の中で手を抜かずにやるだけのことをやれたかどうか.何よりお客様の喜ぶ顔を思い浮かべられるかどうか.
 答えは部品に聞けばすぐに分かることです.


※1 キャブレータ内部に圧入されている真鍮部品の研磨について ①





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